「闇将軍」に3年密着した報道写真家
戦後最大の疑獄事件と呼ばれたロッキード事件。1976(昭和51)年に逮捕・起訴された田中角栄元首相はその後、政界の表舞台から身を隠し、政界に隠然たる影響力を及ぼす存在となった。
そんな「闇将軍」時代の角栄を、足かけ3年にわたり密着取材した報道写真家がいる。安倍晋三元首相の遺影(国会における追悼演説時)の撮影者としても知られる山本皓一氏(83)である。
「角さんが僕に教えてくれたことは、他者と向き合うときの心構えです」
山本氏は、当時を振り返って次のように証言する。
「被写体となる人物に接するとき、負の側面だけを切り取ろうとしてシャッターを切っても、それは本当の記録になりえない。人間とは善悪を同時に抱える矛盾に満ちた存在であり、一方向からのみ評価を下すことがあってはならない。人間のすべてを見るという人生の要諦を、僕は田中角栄から学びました」
リスクを負った「決断」
1983年初頭、ロッキード事件の一審判決を控えていた角栄は、あらゆるメディアから「巨悪」と指弾される存在だった。
雑誌ジャーナリズムの金字塔と呼ばれた立花隆氏(故人)による金脈追及レポートをはじめ、「金権政治」の全貌に迫る報道が連日繰り広げられるなか、被告人となっていた角栄は貝のように口を閉ざしていた。
「田中を批判せざる者、ジャーナリストにあらず」
――そうした状況のなかで、山本氏が「角栄密着取材」のリスクを負う決断をしたのはなぜだったのか。


