「オヤジは写真が嫌いだ。取材は難しいぞ」
「誰も、角栄本人を取材できていない。そう思っていました。確かに、大がかりな調査報道は角栄政治の本質に迫っていたかもしれない。しかし、本人への取材が一切ないのはどうしても疑問が残りました」
そう語る山本氏は、次のように続ける。
「僕はカメラマンで、ペンで勝負する記者のように周辺取材や後から聞いた話を成果にすることはできない。ジャーナリスト失格の烙印を押されようとも、角さんの懐に入り、本人を正面から撮影することのほうが大切だと考えたのです」
山本氏は角栄の秘書・早坂茂三氏に撮影取材を申し入れた。予想通り、早坂は渋い表情を作って見せた。
「オヤジは写真が嫌いだ。取材は難しいぞ」
「そこを何とかお願いします」
秘書・早坂茂三氏の導き
早川氏は続ける。
「まずは目白に通うことだ。だがいきなり写真は撮るな。陳情客のクツを揃えたり、テーブルを並べたり、雑用の真似事をするんだ」
「やります」
「そうしたらオヤジはそのうち必ず聞いてくる。“あいつは誰だ。何してるんだ”と」
「するとどうなりますか」
「……皆まで聞くな。オヤジは情が厚い。大丈夫だ」
