同じ暑さの中にいても、すぐに倒れてしまう人と平気な人がいる。その違いは何か。長年、熱中症研究を続けてきた東洋大学教授の加藤和則さんは「違いは血管細胞の強さにある。最近の研究で、血管細胞に働きかける3つの成分がわかってきた」という――。

※本稿は、加藤和則『血管細胞を強くすれば熱中症は予防できる 熱中症やヒートショックに強い身体に変える3つの成分』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

禍々しい空と45度を超えている温度計
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睡眠不足・疲労・飲酒と熱中症の関係

「寝不足が続くと夏バテがひどくなる」「疲れているときは熱中症になりやすい」「飲酒後に倒れやすい」――これらは単なる俗説ではなく、自律神経・炎症反応・脱水という三つの視点から生命科学的に説明できます。

睡眠不足になると、身体を活動方向に動かす交感神経が優位になり続け、体内の代謝が通常より活発になります。つまり、眠れていないというだけで身体は「内側から余分な熱を発生させやすい状態」に置かれてしまうのです。

疲労については、精神的・肉体的を問わず「弱い慢性炎症」が体内で起きている状態と重なることがあります。この弱い炎症が体温のセットポイント(身体が基準とする体温)をわずかに押し上げ、そもそものスタートラインが高い状態から夏の暑さに臨むことになります。その結果として、同じ外気温でも熱中症に至るまでの余裕が少なくなっているのです。

飲酒については、アルコールの利尿作用による脱水がよく知られていますが、さらに深刻な問題があります。アルコールが分解される過程で生じるアセトアルデヒドは血管を拡張させ、熱が体外に逃げやすくなる一方、血圧の急変動を招きます。

熱中症のなりやすさと個人差・遺伝的要因

熱中症にかかりやすい人、遺伝子的に熱に弱い体質を持っている人が一定数いることが、近年の研究で明らかになっています。そして、熱中症にかかりやすい人・かかりにくい人の違いについても間違いなく個人差があります。もちろん、すべてが遺伝的な要因によるものではありませんが、遺伝子的に熱への耐性が低い人が実際に存在することは確かです。

前述したような生活習慣や環境の差だけでなく、遺伝的な要因も関与していることが明らかになってきているのです。

順天堂大学では、暑さへの強さ・弱さに関連した遺伝子検査のプロジェクトが行われたことがあります。そこで注目されているのが、脂肪酸代謝に関わるCPT2遺伝子です。

このCPT2に変異のある遺伝子を両親から両方受け継いだ場合は熱中症の重症化リスクが高く、片方だけ受け継いだ場合でもリスクは高くなります。ほとんどの人は変異がないわけですが、変異を持っている人は特に暑い環境で気をつけなければなりません。