2026年9月18日、ホテルニューオータニにて昨年5月に鬼籍に入ったセブン&アイ・ホールディングス名誉顧問、鈴木敏文氏の「お別れ会」が開かれる。そこで小売業界を代表して弔辞を読むのがファーストリテイリング会長兼社長の柳井正氏だ。「コンビニの神様」の経営は柳井氏にどんな影響を与えたのか。ジャーナリストの勝見明さんが聞いた――。

「ユニクロが今日あるのは鈴木さんのお蔭」

ユニクロが地方の一チェーンだったころから、わたしは鈴木敏文さんの経営について書かれた書籍を読み、そこから多くを学び、自らの経営に活かしてきました。その意味で、ユニクロが今日あるのは、鈴木さんのお陰と言っていいかもしれません。

鈴木さんご本人と初めてお会いしたのはいつだったか。わたしは鈴木さんを経営者としてずっと尊敬し、それとともに、やや口幅ったいようではありますが、鈴木さんにもわれわれの経営を高く評価していただいた。年齢こそ一回り以上違いますが、同じチェーン展開を行う企業の経営者同士、互いに刺激し合い、学び合ってきたという思いが今も強くあります。

柳井正ファーストリテイリング会長兼社長。鈴木敏文氏お別れの会で弔辞を読む。
撮影=大沢尚芳
柳井正ファーストリテイリング会長兼社長。鈴木敏文氏お別れの会で弔辞を読む。

わたしは以前、セブン‐イレブンに代表されるコンビニエンスストアの弁当も、ユニクロのTシャツも同じであると発言したことがあります。セブン‐イレブンとユニクロ、どちらにも共通するのは、人々の暮らしに根づいた社会インフラであるということです。

アパレル業界では、自分たちの商品を芸術品のように捉えるところがありますが、われわれはそうは考えません。服を通じてあらゆる人の生活をよりよくする。創業以来の使命を“MADE FOR ALL”というコンセプトで表し、ユニクロの商品を“LifeWear”と呼びました。まさに社会インフラです。だから、われわれはデザインだけでなく、素材の開発から手がけました。

アウトサイダーだから出来た新しいシステム

コンビニ業界で、社会インフラという位置づけを明確に打ち出したのがセブン‐イレブンの創業者である鈴木さんでした。公共料金の店頭での収納代理業務をいち早く開始したのも、社会の公器という自覚があったからでしょう。

それまでの小売業は、どちらかといえば、売り手の都合で商品を売って利益を得るという“売らんかな”的な商業主義の色合いがありました。鈴木さんの最大の功績は、日本初の本格的コンビニエンスストアチェーンであるセブン‐イレブンという、従来の小売業とは異なる、まったく新しいシステムをつくり上げたことにあると思います。

もともと小売業出身ではなく、出版業界から転じた鈴木さんは、既存の業界の常識にとらわれない超合理的・超客観的な思考の持ち主でした。小さな店舗で、どのような商品アイテムを、どれだけ提供すればいいのか。お客様がどんなときに、どんな商品を、どれほど要望するかという情報を重視し、その情報に沿った商品を提供する。

ファーストリテイリングも「情報製造小売業」を掲げ、顧客ニーズや購買データを素早く的確に捉え、お客様が本当に要望する商品を企画・生産・販売するビジネスモデルを展開し、情報の商品化に取り組んでいます。