現場、商品すべてはお客様に伝えるため
細部へのこだわりは、商品への強いこだわりにも表れていました。1つひとつの商品に強い関心を持ち、その商品の価値を理解し、商品をつくるだけでなく、その価値がお客様に伝わるようにしなければならない。単に新しいものをつくり続けるだけでなく、それがお客様に評価されるものでなければならない。評価されて、初めてお客様の買うという行為に結びつく。それを実践していたのがセブン‐イレブンでした。
小売業では、概して、サプライチェーンはメーカーや問屋の領域であると捉えがちです。それに対し、鈴木さんはお客様に評価される商品を提供するため、セブン‐イレブン専用工場を店舗の近くに配置できるようにするなど、川上から川下へ至るサプライチェーン全体にわたるセブン‐イレブンならではの独自のシステムを構築しました。
細部、現場、商品への強いこだわり。それは、セブン‐イレブンの生命線がどこにあるか、トップとして確信していたからでしょう。
プライベートブランドも、流通企業では低価格訴求が一般的だったなかで、品質を追求していました。ファストフード類も、品質がお客様に評価されないと判断すれば、即断即決で店頭から撤去したり、商品を廃棄したりといった逸話が残ります。それも、品質はセブン‐イレブンの生命線であり、そこから外れた商品を提供することによるブランドへのマイナスは、撤去や廃棄によるさまざまなロスよりはるかに大きいと判断したからでしょう。
オンリーワン イズ ナンバーワン
トップとして即断即決し、即実行する。それができるのは、自社の生命線について、常に考えているからです。わたしもファーストリテイリングの経営のあり方について、日夜考え続けています。それがトップの役割だからです。
実行や実務を重視し、理論をもとに実行するのではなく、自身の実行をもとに理論をつくることのできる数少ない経営者でもありました。
Only One Is Number One.――という言葉があります。他と違う唯一無二を目指し、その違いによって圧倒的なトップに立つ。それを流通・小売業において実現したのが鈴木さんの率いたセブン‐イレブンだった。そして、企業がOnly One Is Number One.であり続けるためには、トップの役割はどうあるべきか、わたしをはじめ後進たちに範を示したのが鈴木敏文という稀代の経営者でした。改めてお礼の言葉を捧げたいと思います。


