※本稿は、橘玲『プアジャパン インフレ世界を生き抜く資本戦略』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。
不確実性を前に、個人の努力は無意味…
2026年2月、アメリカとイスラエルがイランへの大規模な軍事攻撃を実施し、最高指導者のハメネイ師を殺害しました。
イランは報復としてサウジアラビアやアラブ首長国連邦、カタールなどの石油施設をドローンで攻撃するだけでなく、中東の石油輸送の要衝であるホルムズ海峡を封鎖。原油やLNG価格が高騰し、中東の石油に依存する日本経済への深刻な影響が懸念される事態に陥りました。
個人の努力ではどうしようもない、このような「不確実性」に対し、わたしたちはどのように対処すればいいのでしょうか。
インフレリスクは金融市場でヘッジできる
戦争や内乱に巻き込まれれば、国を捨てて逃げる以外に生き延びる方法はないかもしれません。それに対して原油価格の高騰や、それを原因とする物価の上昇(インフレ)のような経済的な混乱は、適切な対応によって乗り越えることができます。なぜなら、経済的なリスクは金融市場でヘッジできる(保険をかけられる)からです。
2008年の世界金融危機のあと、ギリシアではGDPが25%も縮小するという経済的大惨事が起きました。失業率は約27%、若年層にかぎれば60%にもなり、医療・社会保障が縮小され、自殺者やホームレスが増え、深刻な社会不安を引き起こしました。
首都アテネでは、支援の条件として公務員の削減や年金削減、増税、国有資産の民営化などを要求するEUへの反発から大規模な抗議デモが起こり、二大政党制が崩壊、「反緊縮」を掲げる急進左派連合の政権が誕生しました。
私は混乱のさなかのギリシアを訪れたことがありますが、アテネの中心部にあるシンタグマ広場に1000人あまりのデモ隊が集まり、抗議の旗が揺れる一方で、そこから100メートルも離れていない由緒あるホテルのボールルームでは富裕層のパーティが開かれ、タキシードとイブニングドレス姿の男女がシャンパングラスを片手に談笑していました。


