「リアル店舗がだめならネットで」とそう簡単にいくだろうか。『世界最強のEC戦略』の著者でAmazonトップコンサルタントの伊藤祐太氏は「中途社員1人から始めてたった1年で売上1億円の事業に伴走したことがあるが、ネット事業の成功によってリアルも復活した」という――。

「ネットでクルマが売れるわけない」

会議室の空気は、冷ややかでした。

全国に店舗網をもつある企業。長年その会社を支えてきた主力事業は、時代の変化とともにじわじわと縮んでいました。

打開策としてもち上がったのが、中古車をインターネットで売る新規事業です。

自社サイトと各地のリアル店舗を組み合わせて中古車を売る――構想は描けても、社内の反応は氷のように冷たいものでした。

無理もありません。

クルマは、ネット通販の“鬼門”とされてきました。

一台ごとに状態が違う、いわゆる個体差があります。

しかも数百万円という高単価です。

「写真と説明文だけで、そんな高い買いものをネットでするやつがいるのか」――社内からは、もっともな疑問が次々と飛び出しました。

「そもそも、誰ができるの?」
「ノウハウあるの?」
「うちに、ECサイトなんてつくれるの?」

課題は山積みでした。

作業中に頭を抱えるビジネスチーム
写真=iStock.com/jat306
※写真はイメージです

中途社員、プロジェクトを背負わされる

そのプロジェクトを背負わされたのは、中途で入社した42歳の一人の担当者でした。

情に厚く、それでいて熱くなりすぎない冷静さを併せもち、誰よりも会社の文化に馴染もうと努力していた人です。

ただ、ひとつ大きな弱点がありました。

中途入社ゆえに、社内に人脈がないのです。

中堅以上の企業で新しい何かを動かすとき、これは想像以上に重い足かせになります。

彼が最初にしたのは、声を張り上げて理想を語ることではありませんでした。

まず、現場に足しげく通いました。

店舗のスタッフ、整備の担当者、一台ずつクルマと向き合っている人たちの輪に入り、何が難しく、何ならできそうかを自分の足と耳で確かめていきました。

そして、たどり着いたのが、それぞれが得意な仕事をするということでした。