熱中症の応急処置といえば「首すじや脇の下を冷やす」が定番だ。熱中症研究を続けてきた東洋大学教授の加藤和則さんは「それは間違いではないが、首を冷やすよりも効果的に深部体温を下げることができる方法が研究で明らかになっている」という――。

※本稿は、加藤和則『血管細胞を強くすれば熱中症は予防できる 熱中症やヒートショックに強い身体に変える3つの成分』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

汗をかいている男性
写真=iStock.com/masamasa3
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「首と脇の下を冷やせ」の常識には続きがある

熱中症の応急処置として「首すじや脇の下、脚の付け根を冷やす」という方法は広く知られています。太い血管が体表の近くを通っている場所を冷やせば、冷やされた血液が全身を巡って体温が下がる――という考え方です。

この方法自体は間違いではありません。ただ、実はそれよりも科学的に優れた冷却法があります。それが「手のひら冷却」です。

あまり知られていませんが、人間の手のひらは非常に重要な体温調節機能を担っています。そのメカニズムを理解しておくことで、いざというときに、より効果的な対応ができるようになります。

手のひらに埋め込まれた「熱交換器」の機能

手のひらが体温調節に大きな役割を果たす理由は、「AVA(動静脈吻合どうじょうみゃくふんごう)」と呼ばれる特殊な血管構造にあります。動脈と静脈を直接つなぐバイパス血管のことです。

通常、動脈から送り出された血液は、細い毛細血管の網の目をくぐり抜け、酸素や栄養を組織に渡したうえで静脈へ戻っていきます。ところがAVAは、その毛細血管の区間をまるごと飛ばし、動脈と静脈をショートカットでつないでいます。

毛細血管を通らないということは、酸素や栄養、老廃物の受け渡しには関与できないということでもあります。つまりAVAが運べるものは、事実上「熱」だけです。体温を逃がすことに特化した血管だといってよいでしょう。

体温調節機能の司令塔がAVA

AVAは、指先から指の腹(第1関節あたりまで)、手のひら、母指球(親指の付け根の盛り上がったところ)、小指球(小指の付け根)に分布しています。血管そのものは短く、内径が太く、筋肉の壁が分厚いのが特徴で、交感神経の枝が密に取り付いています。開いたり閉じたりするシャッターのような構造をしているのです。

その密度は非常に高く、爪の下では1平方センチメートルあたり600個ほど、母指球や小指球のあたりでも100個ほどが存在すると報告されています。多くの血管が張り巡らされた手のひらの構造が、効率的な熱交換器として機能しているわけです。

AVAが開くと、熱を帯びた血液が大量に手のひらを通過し、皮膚の表面から熱を放散します。逆に寒いときには閉じて、熱を身体の中心に閉じ込めます。この開閉は、脳の視床下部にある体温調節の中枢からの指令によって、全身のAVAが一斉に行っていると考えられています。