2026年9月18日、ホテルニューオータニにてセブン&アイ・ホールディングス名誉顧問、鈴木敏文氏の「お別れ会」が開かれる。現・セブン‐イレブン・ジャパン会長の永松文彦氏は、鈴木氏から何を学んだのか。ジャーナリストの勝見明さんが聞いた――。
セブン‐イレブン・ジャパン会長の永松氏と鈴木敏文名誉顧問の貴重なツーショット。
写真提供=永松文彦
セブン‐イレブン・ジャパン会長の永松氏と鈴木敏文名誉顧問の貴重なツーショット。

衣擦れの音さえ聞こえなかったFC会議

私がセブン‐イレブン・ジャパン(SEJ)に入社した1980年当時、豊洲の国内1号店オープンから7年目の草創期でした。GMS(総合スーパー)全盛時代で、イトーヨーカ堂グループ合同の入社式では、ヨーカ堂の新入社員は約1600人ほどいましたが、われわれは20~30人程度。会場の隅のほうからSEJ創業者で当時の社長であり、ヨーカ堂で常務だった鈴木さんの姿を遠目で見ていました。

鈴木さんの存在の大きさを間近で感じたのは、店舗での勤務を終え、OFC(オペレーション・フィールド・カウンセラー=店舗経営相談員)になるための研修の最終段階としてFC会議を傍聴したときでした。

OFCは一人で7~8店舗を担当し、加盟店のオーナーさんに対してさまざまな経営カウンセリングやアドバイスを行う職種です。鈴木さんは毎週、全国各地からOFC全員を東京の本部に集め、最新の商品情報などを共有するとともに、最後に自ら演壇に立って講話を行い、毎回、コンビニエンスストアの経営の基本を伝えようとしました。それがFC会議です。

当時は、OFCが100人ほど(現在は約3000人)、各地区のマネジャーや本部スタッフなど合わせて200人くらいだったでしょうか。いよいよ鈴木さんの登壇です。すると、それまでざわついていた場内の空気が一瞬にして変わって緊張感が走り、衣擦れの音さえしないほど静まりかえった。そのオーラに圧倒されたものでした。

フランチャイズビジネスの三原則

その日のFC会議で、鈴木さんはフランチャイズビジネスの3つの原則について語りました。第1に、どの加盟店に対しても公平平等であること。第2に、加盟店も本部も契約書通り、ルールを守ること。第3に、本部から加盟店に指示命令を出すのではなく、対等な立場で行う双方のコミュニケーションが重要であること。

FC会議も、双方のコミュニケーションを活性化するために行われていました。OFCがオーナーさんとのコミュニケーションを実りあるものにするには、十分な情報を持ち、会社の方針をよく理解していなければなりません。そこで、OFCを週に1回、本部に集めて情報を更新し、経営の基本を叩き込む。「FC会議はどれほどコストがかかってもやり続ける」と鈴木さんは言い続けていました。

既存の概念に縛られない“常識破り”の経営を行うことで知られた鈴木さんは、社員にとっても、既存の考えが180度覆されるような衝撃的な判断を行う経営者でした。

あれは、鈴木さんが日本初の本格的POS(販売時点情報管理)システムの採用を決め、セブン‐イレブン全店への導入を開始した1982年のことでした。