ネットとリアルを切り離す必要はない
彼がまず崩したのは、「ネットで車を売り切る」という思い込みそのものでした。
ネットにはネットの役割を、リアルにはリアルの役割をもたせたのです。
つまり、ウェブは“送客”に徹し、最後の成約はリアル店舗で刈り取る。
よく考えてみたら、数百万円もするクルマを、画面のなかだけで決済させる必要はありません。
ネットで興味をもった人を店舗へ呼び込み、現物を見せ、最後は人が背中を押す。
オンラインとオフラインを、それぞれが得意なことに集中させる。
この提案により、「ネットで車なんて」という社内の疑問の大半は、“感情論”から“設計の問題”へと置き換わっていきました。
わかりやすく数字で判断する
次に取り組んだのが、数字で事業を回す仕組みです。
漠然と「客を増やす」のではなく、最終目標を達成するための過程を因数分解しました。
総客数は「サイトの表示回数×商品のクリック率×リアル店舗への来訪率」。
成約数は「商談数×成約率」。
こう分解すると、どこが詰まっているのかが一目でわかります。
そもそもサイトが表示された回数が少ないのか、それともクリックされないのか、リアル店舗に来ても商談に進まないのか――ボトルネックごとに、打つ手はまるで違います。
彼はこれを日次で管理し、毎日数字を見て、翌日には手を打ちました。
高速のPDCA(計画・実行・評価・改善)を、現場の習慣として根づかせていったのです。
数字で回すとは、伸ばす基準だけでなく、退く基準を決めることでもあります。
彼は最終目標までの過程を設計する段階で、撤退ラインもあらかじめ引いていました。
そして実際、事業の開始からほどなく、ある一店舗の撤退を決めています。
すべてが当たるわけではありません。
ですが、ダメな場所を早く見切り、傷の浅いうちに損を止めて、勝てる場所へ資源を寄せる――それが、成功の一因でした。

