日本人は貧しくなったといわれる。この国はいったいどうなってしまうのか。『プアジャパン』が話題の作家・橘玲さんは「私が同書で描いた〈近未来小説〉はあくまでフィクションだ。なってほしくはないが、それを『妄想だ』と否定できない自分がいる」という――。(第2回/全3回)

※本稿は、橘玲『プアジャパン』(プレジデント社)の「第1章〈近未来小説〉日本人を待っていた浅い眠り2026年版」を再掲したものです。

続出する住宅ローン破産…

インフレによって、日本社会も日本人の人生も大きく変わった。

金利が上昇しはじめると、住宅ローン破産が急増した。超低金利に慣れ親しんだひとたちは、ほとんどが変動金利の長期ローンでマイホームを購入していた。そのローン金利が10%台まで上がったことで、毎月の返済額は2倍以上になった。

ローンを払えない契約者が続出すると、銀行は抵当物件を片っ端から競売で売却し、東京や京都など人気地区の物件は外国人投資家が争って購入した。

その一方で、地方の物件はほとんど買い手がつかず、地方銀行や信用金庫などが不良債権を抱えて次々と破綻したが、政府にはもはや金融機関を救済する体力は残っていなかった。

そのため個人も法人も、銀行口座を解約して、決済にはブロックチェーンを使ったステーブルコインを使い、それ以外の資産は海外株式や金、ビットコインなどで保有するようになった。

硬貨ごとに積み上げたコインを前に、スマホを使用している男性
写真=iStock.com/bee32
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「ブラックウェンズデー」で救国内閣

私は30代半ばまで大手電機メーカーの技術者で、家賃補助を受けて賃貸で暮らしていたので、幸いなことに住宅ローン破産は免れた。海外企業との価格競争に巻き込まれてボーナスは年々減らされたが、会社にしがみついていれば定年まで食いつなぐことはできるだろうと、漠然と信じていた。

だが会社を愛していた私から見ても、自社の製品は価格でも品質でも中国メーカーにまったく太刀打ちできず、2期連続の赤字で大規模なリストラが始まった。

同じ頃、財政赤字をコントロールできなくなった日本がIMF(国際通貨基金)管理になるとの憶測が流れて、官邸は機能不全に陥り、国会は連日紛糾した。株価と国債価格が暴落し、為替市場で円が1日で10円以上も下落する「ブラックウェンズデー」が起きて、ようやく超党派の救国内閣が成立した。

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