財政悪化で「消費税率30%」

政権の喫緊の課題は財政の健全化で、消費税率は30%になり、年金の受給開始年齢は70歳に引き上げられた。医療・介護サービスは保険料が大幅に上がり、自己負担は5割で、歯科治療が保険適用から外された。

老人だけでなく若者でも、いまでは歯が欠けているのは当たり前になった。

増えつづける認知症の高齢者を特別養護老人ホームにはとうてい収容できず、住宅地ではゾンビ映画のように老人たちが徘徊はいかいするようになった。認知症と診断されると手の甲にコンピュータチップを埋め込まれ、スマホをかざすだけで自宅や病歴などがわかるようになっている。

これまでの常識が跡形もなく崩壊していく現実を目の当たりにして、生来臆病な私も、このまま座して死を待つわけにはいかないと腹をくくった。わずかな割増退職金で会社を辞め、まったく縁のない不動産営業の世界に飛び込んだのだ。

日本の電機メーカーがインドに買収される日

私の唯一の取り得は、ビジネス英語が話せることだった。外資系の小さな不動産会社に転職したのは、AIの時代に生き残るのはモノではなくヒトだと思ったからだ。

必死の思いで、欧米はもちろん中国やインド、東南アジアの富裕層に首都圏のマンションを営業して回ったあと、その実績が認められて、いまの会社にヘッドハンティングされた。目標に到達できなければ問答無用で解雇されるが、成績次第で青天井の報酬が支払われるという条件だ。

私が以前勤めていた電機メーカーはインドの会社に買収され、「同一労働同一賃金」の原則のもと、日本人社員もインド人と同じ給料で働いている。社員食堂のメニューがすべてカレーになったとも聞いた。彼らの窮状を聞くにつれ、きびしいけれどもここで頑張るしかないとあらためて思う。