公共交通機関も高くて乗れない

東京駅から中央線で新宿に向かう。公共交通機関の料金が大幅に引き上げられたことで、満員電車は過去のものになった。

橘玲『プアジャパン』(プレジデント社)
橘玲『プアジャパン』(プレジデント社)

3000円の追加料金を払ってグリーン車に乗り込むのはみな外国人だ。都内の移動手段はバスや電車から自転車と徒歩に変わり、これが日本人が健康になっている理由のひとつではないかと思う。

物価が上昇しはじめ、実質賃金の下落が止まらずに生活が苦しくなると、与党は選挙に勝てなくなって政治が混乱した。「外国人ゼロ」「税金ゼロ」など好き勝手な政策を掲げる新興政党が躍進し、救世主として登場した保守政治家は、外国人政策を見直して、永住許可申請の厳格化や、外国人による土地取得の規制強化で保守派の喝采を浴びた。

ところが奇妙なことに、保守政権のあいだに外国人労働者の数は大幅に増えた。

少子化による人口減で日本経済は空前の人手不足に陥っており、とりわけ地方経済は外国人労働者がいないと維持できなくなっていた。このままでは倒産・廃業するしかないという圧力を受けて、政治家たちは口では「排外主義」を唱えながら、実際には外国人労働者の受け入れ規制を緩和した。

イギリスは「移民問題」を解決するため2016年に国民投票でEUからの離脱を決めたが、じつはその後のほうが移民が増えたのと同じだ。

「移民国家」化する日本

いまでは農業や物流、建設業だけでなく、病院や介護施設も外国人なしでは回らない。電車内をざっと見回しても、半分ちかくは外国人か、日本に帰化した外国にルーツのある乗客のようだった。外国人比率は20%に近づき、日本は着実に「移民国家」への道を歩んでいる。

日本が多民族国家になるにあたって大きな影響を与えたのが、中国の景気低迷と就職難だった。若年失業率は20%を超え、努力は無意味だという「寝そべり族」や、最低限のエネルギーで生活する「ネズミ人間(老鼠人)」が増えていった。

そんな中国の若者から見れば、大卒の就職内定率がほぼ100%という日本はまさに「夢の国」だった。

そのうえ採用にあたって国籍を考慮してはならないので、日本の大学や大学院を卒業すれば、大企業の正社員になることも難しくはない。そこで何年か実務経験を積んだあとは、欧米のグローバル企業に高給で転職するというのが“必勝パターン”になった。