日本を去る優秀な若者たち

需要と供給の法則では、稀少なものの価値が高く、たくさんあるものの価値は低い。日本においてたくさんあるものは高齢者で、稀少なのは若者だ。いまの子どもたちは生まれたときから大切にされ、さまざまな調査で、日本の若者の8割以上が自分を幸福だと思っている。

そのことが知られるようになると、過酷な競争社会で子どもを育てることを不安に思っていた中国の富裕層が、家族で日本に移住するようになった。東京・文京区など、公立小学校のレベルが高いとされる地域では、クラスの半数が外国人というのがもはや当たり前だ。

こうした変化に真っ先に反応したのが、ベータ世代の日本の若者だった。日本で暮らす中国人の子弟には、中国語と日本語だけでなく、英語も流暢りゅうちょうに話すトリリンガルが珍しくない。

こうした賢い若者は経済的にも成功するので、友だちとしてつき合うのなら、日本語しか話せない同世代の日本人よりずっと魅力的だ。彼らのような新しいエリートが設立したベンチャーが、シリコンバレーに次々と進出して話題になった。もっとも、いったん日本を出ていった若者たちは、もはやこの国に戻ってくることはないのだが。

「エッセンシャルワーク」ならいくらでもある…

芸能界も人種の多様化が進んで、昨年のM-1グランプリでは日本生まれのベトナム人コンビが優勝した。日本も韓国も少子化なので、アイドルグループを維持することができなくなり、融合してJKポップになった。

野球もサッカーも有望選手はほとんど海外に移籍し、スポーツニュースは大リーグとヨーロッパサッカーの話題ばかりだ。一方、プロ野球やJリーグはアフリカや東南アジアなど外国にルーツをもつ日本人選手が増え、手軽に盛り上がれる娯楽としてそれなりの人気を保っている。

最近の子どもたちは、面倒な仕事はAIに任せればいいのだから、勉強はコスパが悪すぎると、スポーツやダンス、歌、芝居など好きなことしかやらなくなった。

うちの子どもも小学校5年生で学校に行かなくなり、最初は不安だったが、いまではそのような子どもが多数派になって、「不登校」という言葉は死語になった。毎日学校に通うほうが少数派で、深刻な教員不足もあり学校の統廃合が進んでいる。

長男は芸能志望で、16歳になったらソウルのダンススクールに行きたいといっている。10歳の長女もそれを見て、ネットで中国語と韓国語を勉強しはじめた。妻も私も、そうやって「自分らしく」生きていってくれればいいと思っている。たとえ夢がかなわなくても、エッセンシャルワークの仕事がいくらでもあるのだから。