人によってミトコンドリアの量は違う

また、個人によって細胞内でエネルギーを生み出すミトコンドリアの量は異なります。ただ厳密にいうと、ミトコンドリアではその量よりも質のほうが重要です。エネルギーをうまく作れるミトコンドリアを持つ人とそうでない人がおり、この違いは遺伝によって左右される部分があるのです。

また、自動車のエンジンが古くなって不完全燃焼すると排気ガスが増えるように、ミトコンドリアがダメージを受けると病気の原因になったり老化を進めたりする活性酸素が爆発的に増えるという悪循環に陥ります。

興味深いことに、ミトコンドリアはすべて母親由来です。ミトコンドリアは精子に含まれず、卵子にのみ含まれているため、私たちのミトコンドリアDNAはすべて母方の系統を受け継いでいます。

長距離走の能力は母系の遺伝が関係しているというのは、このミトコンドリアの質に由来します。競馬の世界でも長距離のレースで母方の血統を重視するのは鉄則とされていますが、それもこの理由によるものです。

はっさく、シークワーサー、ココナッツ

私たちはハッサクに含まれるオーラプテン、シークワーサーに含まれるタンゲレチン、そしてココナッツに含まれる中鎖脂肪酸の組み合わせが、ミトコンドリアの機能を介し、血管内皮細胞の保護効果を持つのではないかということを明らかにしました。これに関して言えば、前述した体質による個人差は重要な観点です。

人によって体質や気温に対する反応は異なりますし、同じ人でも体調によって変わります。これらの成分を摂取することで症状が少し緩和されるということは、必ずしも身体の弱い人だけが対象ではありません。元気な人にとってもプラスアルファの効果があると考えています。

ところで、ミトコンドリアは細胞のエネルギー工場であり、神経細胞は特に大量のエネルギーを必要とします。そのミトコンドリアの機能を熱ストレスや酸化ストレスから守る成分が、例えば認知機能の維持などにも有効である可能性は十分に考えられます。

まだ基礎研究の段階ですが、これら柑橘由来の成分が持つ神経細胞の萎縮や障害による神経性疾患に対する効果が期待されています。

すでにオーラプテンを含む柑橘ジュースを長期間飲むことによって、認知機能の維持が証明されており、機能性表示食品として認められています。また、オーラプテンもタンゲレチンも、酸化ストレスや炎症ストレスによる神経変性や機能障害を抑制することが報告されていて、パーキンソン病などの難治性の疾患への応用も考えられるかもしれません。

はっさく
写真=iStock.com/Koki Iino
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