AIの登場で、上司と部下の関係はどう変化するのか。パーソル総合研究所主席研究員の小林祐児さんは「部下がAIで作成した資料の中身を理解していなかったり、上司ではなくAIに相談するようになり、部下が抱える課題が見えずらくなるなど、これまでにない悩みが生まれている。上司に求められる役割が変わっており、マネジメント方法をアップデートする必要がある」という――。
オフィスのデスクで資料を見ながら話をする2人のビジネスマン
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AIによって生まれた新たな上司の悩み

生成AIが職場に普及してから、上司やマネジャーの口から出る困りごとの種類が変わってきた。仕事は速く進むようになった。成果物の見栄えも良くなった。にもかかわらず、どこかがうまくいっていない。

そして、その違和感の多くは、部下本人には見えていない。速く終わり、整った成果物が手元にあるため、上達しているという実感すらあるかもしれない。問題が見えているのは、たいてい上司の側だけである。

では、誰がそれを止めるのか。

最初に思い浮かぶのは、現場の上司だろう。実際、パーソル総合研究所「AI環境における人材とマネジメントに関する定量調査」では、部下の成果を引き出しているマネジャーの行動が明確に特定されている。だが同時に、その上司自身がすでに受けきるのが難しくなっていることも、示されている。本稿では、AI環境で何が起きているのかを確認したうえで、マネジメントをどうアップデートすべきかを考えたい。

まず、現場で何が起きているかを確認しよう。上司の声を聞いていて最初に浮かび上がるのは、「AIによる新しい苦労」の発生である。

パーソル総合研究所の調査によれば、部下のAI利用頻度が高い上司ほど、AI活用に関する負荷が高い。とりわけ部下がヘビーユーザーである場合、「部下のAI作成物に誤りがある」「部下がAI作成物の内容を理解できていない」が突出して高くなる。AIの利用が進むほど本人の理解が伴わなくなるという現象の、上司の側から見た風景である。

【図表1】部下の生成AI利用頻度別「AIによる上司の負荷」(ある・計、%)
出所=パーソル総合研究所「AI環境における人材とマネジメントに関する定量調査」