サウジアラビアの巨大リゾート構想が、行き詰まっている。ムハンマド皇太子が主導する未来都市構想「ネオム」の一環として、紅海沿岸120キロに12の観光地・15の高級ホテルを整備する「マグナ」。山の内部に埋め込むホテルや、高さ275メートルのタワーなどを計画していた。ところが、発表から2年で高級ホテル15軒の記述が公式サイトから消え、新規資金の配分も2030年代へ先送りされた。海外メディアの報道が巨大構想の異変に注目している――。
サウジアラビア王国皇太子モハメド・ビン・サルマン・ビン・アブドゥルアズィーズ・アル・サウド殿下の公式肖像写真
サウジアラビア王国皇太子モハメド・ビン・サルマン・ビン・アブドゥルアズィーズ・アル・サウド殿下の公式肖像写真(写真=サウジアラビア通信社/CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons

衛星画像に写った「奇抜な建造物」

紅海のブルーとコントラストをなす、淡いホワイトの美しい砂。海と砂丘が交わるその境界の地に、緑豊かな庭園が広がる。

サウジアラビアの実質的な指導者であるムハンマド・ビン・サルマン皇太子の所有とみられる、豪華な宮殿だ。米ビジネス・インサイダーが入手した2025年1月撮影の衛星画像には、完成した姿がはっきりと写っている。

海岸線に沿ってプライベートビーチが伸び、内陸側に目立つのはゴルフコース。米ビジネス誌のファスト・カンパニーによれば拠点内には少なくとも16の建物が設けられ、4つのプールを備える。ヘリポートに至っては敷地内の10カ所に設けられている。

ファスト・カンパニーは2025年、これを「ネオムで現在建っている唯一の奇抜な建造物」と評した。ネオムは、ムハンマド皇太子が2017年に立ち上げた未来都市構想で、石油依存型経済からの脱却を目指す国家改革の目玉だった。

ネオムの旗印の下、紅海の入り江であるアカバ湾の沿岸には、12の観光地からなる超高級リゾート地帯「マグナ」が計画された。しかし、サウジアラビアの財政はその後、みるみるうちに悪化。

米独立系ニュースメディアのセマフォーによれば、ネオムはマグナへの新規資金の配分を2030年代まで凍結した。12の観光地に計画された計15軒の高級ホテルは、1軒も開業していない。

国民のため経済の転換を描いたネオムだが、これまでに完成が確認された主な建造物は主として、皇太子の所有とみられるこの宮殿と、産業都市オクサゴンの一部にとどまる。

総延長120キロにわたるリゾート地帯

ネオムではマグナの他にも、砂漠を貫く全長170キロの鏡張りの直線都市「ライン」や、山岳スキーリゾート「トロジェナ」、富豪がスーパーヨットで乗り付ける「シンダラ島」などを構想した。

英経済紙のフィナンシャル・タイムズは、高級沿岸開発などを含む広域開発計画であったと振り返る。一部は実際に着工し、現場には大量の重機が絶え間なく出入りした。だが現在、いずれの計画も大幅な見直しを迫られている。

マグナはこうしたネオムの開発サイトのうち、沿岸部にあたる地区に位置する。中東湾岸ビジネス誌のアラビアン・ガルフ・ビジネス・インサイトによると、それまで個別に発表されてきた12のリゾートを「マグナ」という一つの名前で束ねると発表されたのは、2024年6月のことだった。

120キロメートルにわたる沿岸地区が「ラグジュアリーで持続可能な観光の新たな世界標準になる」とネオムは謳った。開発は地域の5%にとどめ、海岸の景観を保全する。ヘリポート5基と専用滑走路1本を建設し、リゾート地帯への入り口とする構想だ。