契約解除予算が新規建設予算を上回る
12のリゾート地を構想したマグナだけでなく、壮大なプランを描いた親プロジェクトのネオム全体に赤信号が灯っている。
ネオムに充てる資金は枯渇し、プロジェクトは大幅に縮小された。セマフォーによれば、サウジアラビアはこれまでにネオムに640億米ドル(約9兆9200億円)を投じてきたが、目に見える成果は洋上に八角形の港を展開するオクサゴンの一部完成にとどまる。そのオクサゴンさえ、象徴だった八角形の形状を捨て、実用性を優先した単なる港町の形態に舵を切り直した。
壮大な計画を見直すネオムは今後5年間、新規の建設よりも契約の解除に多くの資金を充てる見通しだ。
米ニュースサイトのセマフォーは、ネオムの2026年から2030年までの予算に、長期契約を打ち切られる請負業者への違約金として600億リヤル(約2兆4500億円)が計上されていると報じた。
この支払いは、長期契約を途中で打ち切る際の違約条項に基づくものだ。計画の一部を止めるだけでも巨額の費用が生じる。
同じ5年間の新規建設予算は400億リヤル(約1兆6300億円)で、契約解除の費用がこれを50%上回る。違約金の600億リヤルは、サウジアラビア政府が見込む2026年の財政赤字額の3分の1超に相当する。
新たに注ぎ込む400億リヤルの大半は、オクサゴンの開発やインフラ整備に充てられる。収益性の見込みをもとに優先順位が見直され、マグナへの新規資金配分は2030年代に先送りされたと、セマフォーは伝えた。
3つの「1万人キャンプ」がもぬけの殻
ネオムが縮小する今、開発地が点在していた砂漠からは、都市が消えつつある。
英建築デザイン誌のデジーンは2025年11月、砂漠に整然と並ぶ平屋建ての建物を捉えた衛星画像を掲載した。「ライン」の南に建設された最大の住宅地「ネオム・コミュニティ1」だ。単身者向けの平屋が数百棟規模で並び、中心部には商店やモスク、学校、プールまで備わる。労働力を確保するため、ネオムは砂漠に生活圏を一から築き上げた。
その生活圏が、いま縮小している。ネパール英字紙のカトマンズ・ポストは、ネオムだけで推定8万人のネパール人労働者が雇用されていたと報じた。「ライン」の工事停止に伴い、最大1万人規模の労働者キャンプ3カ所が空になったという。
ネオムの現場近くにある商業地区からは、目に見えて人影が消えている。現地のネパール人でつくる非居住ネパール人協会タブーク支部の会長、ブディ・プラサド・バストラ氏は同紙に対し、「皆、家を建てるためにローンを組んでいた。子どもを良い学校に通わせていた」と語る。
ネオムの建設事業で稼ぐことを前提に、母国で暮らす家族の生活レベルを引き上げていたわけだ。バストラ氏は「彼らは、これからどうなるのかと問うている」と語る。

