200メートル超ツインタワーの客室はわずか41
ネオムへの関与を発表したブランドの一つに、高級ホテルグループのハイアットがある。ネオムとの提携を決めた当時の文書には、マグナの12の観光地に2500戸以上の高級住宅を建設すると記されていた。
前出のアラビアン・ガルフ・ビジネス・インサイトによれば、海岸沿いに小規模な高級ホテルを点在させながら、住民1万4500人が暮らす街をつくる。これが当初の狙いだった。
中東の英字ビジネス誌のアラビアン・ビジネスによれば、ネオムはこの沿岸地区の開発で2030年までに、サウジアラビアのGDPを26億リヤル(約1060億円)ほど押し上げると見込んでいた。
発表された計画は、確かに注目を集めた。
マグナに点在する12の観光地の1つ「アクエルム」は、高さ450メートルの山並みの内部に施設全体をうずめ、文字通り隠れ家とするユニークな設計だ。
宿泊客は世界初とされる水上マリーナからボートに乗り込み、「隠された地下運河」を抜けて山の中へ向かう。内部に入れば天然の岩肌に溶け込むようにして、高さ100メートルの近未来的な吹き抜けの中庭が客を迎える。ホテルに到着するまでの道のり自体が、まるでスパイ映画の冒頭のように好奇心を掻き立てる。
別の観光地「エピコン」の中核施設は、高さ275メートルと225メートルの高層タワー2棟だが、客室をわずか41室にとどめるラグジュアリーな造りだ。
計画・設計の段階を出ていない
アラビアン・ビジネスは、マグナを「世界で最も未来的な沿岸開発の一つ」と紹介し、山をくり抜いたホテルからプライベートのゴルフリゾート、オーダーメイドのウェルネス施設まで、サウジで最も注目される観光リゾート群だと伝えていた。
12の観光地を合わせた高級ホテルの数は15軒、客室数は1600室に及ぶ計算だった。
計画書には、運営を担う企業の名が並んだ。前出のハイアットは2024年9月、マグナへの参入を発表した。最大の観光地ジャウムールでは、2027年に「パーク・ハイアット」と「アンダーズ」の2ブランドを計350室で開業するとした。ハイアットの資料は、マグナの12の観光地で「地球上のどこにもない体験」が味わえると謳う。
だが、マグナのブランド発表から2年が過ぎた現在、計画全体の遅延が報じられるようになった。アラビアン・ガルフ・ビジネス・インサイトは、マグナの3件のプロジェクトが、いずれも計画・設計の段階を出る兆しを見せていないと報じた。
山中の隠れ家「アクエルム」、ツインタワーの「エピコン」、そして在来種の動植物を呼び戻す自然保護型リゾートとして華々しく発表された「ザルドゥーン」である。いずれも絵空事の域を出ない。
エピコンをめぐっては、業界誌MEEDが、基礎工事を担う地元企業が準備作業に入ったと2024年3月に報じていた。それから2年余りを経た現在も、アラビアン・ガルフ・ビジネス・インサイトによれば、他の2拠点と同様、設計・計画段階を越えた形跡は見られないという。

