「中止した計画は一つもない」

人影のない建設現場の姿が報じられるようになってなお、サウジアラビア側は「中止」という言葉を避けている。

ネオムを傘下に置くサウジアラビアの政府系ファンド、公共投資基金(PIF)のヤシル・アル・ルマイヤン総裁は今年4月、中止されたプロジェクトは一つもないと述べた。セマフォーによると、新たな2026〜2030年戦略のもと、支出の優先順位を見直しているのだと説明している。

2026年FIFAワールドカップ決勝のアルゼンチン対スペイン戦で、FIFA最優秀若手選手賞を授与するヤシル・アル・ルメイヤン総裁
2026年FIFAワールドカップ決勝のアルゼンチン対スペイン戦で、FIFA最優秀若手選手賞を授与するヤシル・アル・ルメイヤン総裁(写真=Bryan Berlin/CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons

だが、実態として契約の解除は、その1カ月前からすでに始まっていた。

中東建設業界専門誌のコンストラクション・ウィーク・オンラインによると、今年3月29日、トロジェナの淡水湖に水を供給する3基のダムをめぐり、イタリアの建設大手ウェビルドとの契約が進捗率約30%の段階で解除された。同契約には、ダムの堤体と一体になったホテル建築「ザ・ボウ」の建設も含まれていた。ネオムは同じ地区で作業していた他の請負業者に対しても、同様に解除を通告した。

人工雪の水源となるはずだったダム建設が契約解除されたことで、実質的にトロジェナは行き詰まった。2029年アジア冬季競技大会の会場となるはずだったが、カトマンズ・ポストによると開催計画は今年1月に無期限延期された。

かつて公式サイトには、野心的なCG画像が掲げられていた。ホテルを含む複合施設が山並みのように連なり、その屋上を複雑に交差した人工ゲレンデが走るプランだった。

今、そのイメージ図は見る影もない。サイトを開けば、まるで計画の困難さを象徴するかのように、荒々しい岩肌の映像が流れるのみだ。

公式サイトから姿を消した15のホテル

現在サウジは、AIデータセンターの建設など、より確実な計画に軸足を移しつつある。

計画変更について何ら公式な発表のないまま、マグナのウェブサイトでは、密かに記述が書き換えられている。

アラビアン・ガルフ・ビジネス・インサイトによれば、ネオムは公式ウェブサイトを刷新し、マグナのページからは15軒の高級ブティックホテルやリゾートの記述が消えた。

同メディアの取材に対し、ネオムの広報担当者は「ユーザー体験を向上させるための定期的な更新」であり、計画変更を示唆するものではないと主張する。

だが、以前掲載されていた美麗なCGレンダリング画像が現在でも計画に適合していると言えるか、との質問に対しては、回答しなかった。

ネオムの始まりは、2017年10月。ムハンマド皇太子はリヤドの国際投資会議でネオム構想を発表した。当初の説明では、官民合わせて総額5000億米ドル(約77兆5000億円)が投じられる計画だった。

そして冒頭に掲げた衛星画像は、構想の発表から約7年後の開発地を捉えたものだ。王族向けに計画された5棟の宮殿ですら、完成が確認できる建物は1つにとどまる。