在来線ホームの直上に新駅を建てる難工事
インドが駅づくりで選んだのは、インドネシアのWhooshとは正反対の方針だった。NHSRCLによると、12の駅はいずれも、市街地や既存の在来線の鉄道駅に近い場所に置かれる。
なぜアクセスにこだわるのか。NHSRCLはその狙いを、「公共交通指向型開発(TOD)」という言葉で説明する。鉄道や地下鉄、バスと駅を一体化させ、駅を地域の拠点にする構想だ。街から切り離されたWhooshの駅とは、発想が根本から異なる。ただし、この立地を選んだ代償は、工事現場に回ってきた。
街の中心に駅を置くという選択が重い負担となって表れているのが、インド西部の商都アーメダバードの現場だ。
ここでは、列車が日々行き交う在来線ホームの真上に、新たな高速鉄道の駅が建設されている。インド政府広報機関のインド報道情報局(PIB)によると、高速鉄道のアーメダバード駅は、既存在来線である西部鉄道の10番・11番・12番ホームの上に構築される。地下鉄のアフマダーバード・ジャンクション駅(カルプール駅)とは、エレベーターや階段、エスカレーターで直結する。
現在、コンコースや軌道、ホームスラブといった主要な構造はほぼ出来上がり、仕上げ工事を残すのみだ。既存の構造物にかかる荷重を抑え、振動を厳密に制御する。在来線の運行を長く止めることなく、その直上で重機を動かしてきた。鉄道土木のなかでも難度の高い工事である。
インド高速鉄道の設計図を描いた日本企業
アーメダバード駅の現場を設計面で支援したのが日本だった。海外鉄道コンサルタントの日本コンサルタンツ(JIC)によると、同社は2016年12月、国際協力機構(JICA)からこの高速鉄道の詳細設計を受託した。日本工営、オリエンタルコンサルタンツグローバルと共同企業体を組み、設計図書や入札図書一式を作成して、NHSRCLの発注業務を支援してきた。
こうした支援の対象には、在来線との接続区間やムンバイの地下駅、海底トンネルも含まれる。
アーメダバードにはもう一つ、サバルマティ・ターミナル駅も置かれる。在来線の操車場跡に整備されるこの駅は、鉄道と地下鉄、バスが一カ所に集まる交通結節点となる計画だ。1つの都市に2つの停車駅を持つのは回廊沿いでアーメダバードだけで、ちょうど東海道新幹線の東京駅と品川駅のような関係にあたる。
こうした街中立地は、Whooshが陥ったような不振を避ける条件になる。鉄道業界専門ウェブメディアのレイルウェイ・テクノロジーによると、駅周辺の開発方針を固めた2018年の協議で、インド鉄道の高官はインドの通信社IANSに「駅が近隣地区とうまくつながらない限り、高速鉄道は採算が取れるだけの乗客数を集められない」と語った。在来線ホームの直上に建ち、地下鉄カルプール駅とも直結するアーメダバード駅は、その条件を最もよく満たす一例だ。
