自分から転職しない? 杉村太蔵流「棚ぼた」を引き寄せる技術

杉村太蔵さんは、大学中退後、ビル清掃の派遣社員、外資系証券会社、国会議員を経て、現在はタレント、投資家、経営者の顔を持つ。「自分から望んで転職したことがない」というが、常に出会いを引き寄せながらユニークなキャリアを歩んでいる杉村さんに、「骨太なキャリア論」を語ってもらった。

上げたいのは“給料”なのか“所得”なのか

最近、「株価は上がっているけれど、給料は全然上がらない」という嘆きの声をよく耳にします。

でも、みなさん“給料”を上げたいのでしょうか?

“所得”を上げるのではダメなのでしょうか?

私は、国会議員だった2008年に証券会社で口座を開き、翌年議員を辞めてから本格的に株式投資を始めました。1年ほど家族でバンクーバーで暮らしていたのですが、この時はデイトレーダーとして株式投資で生活費を稼いでいました。帰国してタレント活動をするようになってからも、株式投資は続けていて、今後も積極的に株を買い増そうと考えています。

給料を上げるのは至難の業です。でも、大事なのは所得です。給料にプラスアルファの所得があれば、もっと精神的にもゆとりを持って生活ができるはずです。投資は確かにリスクもありますが、新NISAなどを使って資産形成をし、投資で配当所得を増やしていくという発想も重要だと思います。

杉村太蔵(すぎむら・たいぞう)
杉村太蔵(すぎむら・たいぞう)
元衆議院議員
1979年生まれ、北海道旭川市出身。筑波大学中退後、清掃員の派遣社員から外資系証券会社に勤務。2005年9月の衆院選にて自民党公認で最年少当選を果たし、厚生労働委員会などで若年者雇用の改善等に尽力。任期満了後はタレントへと転身し、情報・バラエティー番組でコメンテーターとして活躍。また、慶應義塾大学大学院を修了(所定単位取得退学)したほか、実業家・投資家として地方創生事業を展開するなど、多方面で精力的に活動している。近著『杉村太蔵の推し株「骨太」投資術』がベストセラーに。私生活では3児の父。

「骨太の方針」でキャリアを考える

前編では、7月21日に閣議決定された「骨太の方針2026」という“神資料”を、全ビジネスパーソンが熟読すべきだとお伝えしました。その使い方として、ここに書かれた17の戦略分野と62の主要な製品・技術等を参考に、投資先を見極める方法をご紹介しましたが、この資料は自分のキャリアを考えるうえでも参考になるはずです。

内閣官房ホームページの日本成長戦略本部/日本成長戦略会議のページにアップされている「戦略17分野における『主要な製品・技術等』の官民投資ロードマップ 参考資料」の2ページ目に、17の戦略分野と62の主要な製品・技術等が一覧になっているので、それをじっくり見て、自分が持っているスキルや経験、興味を生かせるところがないか、考えてみるといいと思います。

同じサイトに上がっている、それぞれの製品・技術等の詳細が書かれた、「戦略17分野における『主要な製品・技術等』の官民投資ロードマップ」という資料を見ると、各分野が抱えている課題や、今後政府が注力しようとしていることが、より詳細に書かれています。

転職を考えている人は、転職先を決めるうえで参考になるでしょうし、今自分が働いている会社が、この中でどんな強みを発揮できそうか、社内のどの部署が伸びそうか、将来のキャリアを考えるうえで、自分はどこを伸ばすべきかを見極めるヒントになるでしょう。

AI時代に必要なのは「蓄積されたデータ」

骨太の方針の、17の戦略分野の最初に挙がっているのがAI(人工知能)です。AIは、まったく何もないゼロのところからは何も生み出せません。蓄積されたデータがあってこそ、そこから分析して何らかの答えを導き出します。つまりAI時代では、それぞれの現場に蓄積されたデータが重要になってくるのです。

そう考えると、これまであなたが働いてきて培った経験やスキルなど、現場で積み上げてきたデータこそが大きな武器になるはずです。今は人手不足で、採用でも売り手市場ですから、成長機会を求めて転職を繰り返しながらキャリアを積んでいる人も多いと思います。

しかし、今後は意外と1つの会社に腰を据えて、現場の経験やデータを蓄積しながら、長くキャリアを積むことも強みになってくるのではないかと思います。今、自分が働いている会社や部署が大きく成長するよう、骨太の方針を使い倒しながら英知を振り絞って頑張るのも、おもしろいのではないでしょうか。

「棚ぼた」を逃さないための3つの法則

かく言う私は、これまでさまざまな仕事を経験してきましたが、転職したくて転職をしたことがありません。ビル清掃の派遣社員から外資系証券会社、国会議員、テレビのコメンテーターと、仕事を変えてきましたが、いずれも自分から望んで働きかけたのではなく、声を掛けていただいて実現した転職です。

「棚ぼた」ともいえますが、ぼたもちが落ちてきたときに、棚の下にいるための努力はしてきました。それまで自分がやったこともない、新しい世界へのお誘いをいただいたときに、失敗を恐れてちゅうちょしたりせず、一歩踏み出す勇気を持ってきました。それから、「何かあったときに声を掛けてもらえる自分でいた」ことも大きかったように思います。

そのために、というわけではありませんが、私が「この人と一緒に仕事がしたい」「一緒に仕事をしていると楽しい」と思ってもらえるよう、心がけていることが3つあります。

1つ目は、できるだけいつも連絡がつく状態にしておくこと、レスポンスを早くすることです。私のメールの返信は非常に早くて、よく相手の方に驚かれます。そもそも、せっかく声を掛けようと思っても連絡がつかないと、そこで諦められてしまいます。棚ぼたを逃してしまいかねません。

これは、外資系証券会社で働き始めたときの最初の上司から「電話は5秒で出ろ」と言われたことから身に付いた習慣です。今思えば、理不尽とも思えますが、当時の私はそれをうのみにして、その後、大きなチャンスを逃さずに済んだことが何度もあります。国会議員になったのも、最初にかかってきた電話にすぐ出て「5分で行きます!」と答えたことがきっかけでした。

2つ目は、どんなときもごきげんでいることです。私が「この人とまた一緒に仕事をしたいな」と思う人の共通点は何か、と考えたときに、みなさん常にごきげんだということに気づいたからです。これは、会社員であってもフリーランスであっても、絶対に必要な要素だと思います。

杉村太蔵(すぎむら・たいぞう)

タイゾー流「ユーモアの磨き方」

さらにもう一つ必要なのは、ユーモアです。ユーモアがある人は、自分がごきげんでいるだけでなく、周りを楽しい気分にさせてくれます。ごきげんで、ユーモアがある人というのは、「一緒に仕事をすると楽しいから、また一緒に仕事がしたいな」と思ってしまいませんか?

ユーモアは、磨く方法があります。

みなさん、「杉村太蔵」と聞いて最初に思い浮かぶエピソードは何ですか?

おそらく「料亭発言」でしょう。2005年、26歳で国会議員に当選した直後に、「早く行ってみたいですね、料亭に」と発言して大バッシングを受け、自民党の武部勤幹事長(当時)に叱られました(※)。

この話は、北は北海道、南は沖縄まで、全員が大好きです。人間って、人が失敗した話、怒られた話が大好きなんです。

みなさんも、これまでのキャリアを振り返ると、1度は失敗したり怒られたりしたことがあると思います。これをぜひ、原稿用紙3枚、1200字くらいにまとめてみてください。

原稿用紙1枚は、NHKのアナウンサーが普通に読むと1分くらいになるので、3枚だと3分です。3分間スピーチというのは、意外と使えます。人前で話すときだけでなく、1対1でもちょうどいい長さになります。

自己紹介がてら「私はこれまで、こんなことで怒られました」と3分間、話してみてください。笑いも取れますし、何より、自分が失敗したり怒られたりしたことを話してくれる人に対しては、誰もがつい心を開いてしまうものです。ぜひやってみてください。

※ 政界入り前は契約社員だった杉村氏が、2005年の衆議院議員総選挙で自民党から初当選した直後に行われたインタビューでの発言。高額な議員歳費(年収約2500万円)などの優遇措置を知り、「黒塗りのハイヤーに乗って料亭に行ってみたい」「新幹線はグリーン車に乗り放題」「議員宿舎がすごく広い」など、無邪気な発言を連発したことが世間の注目を集めた。当時は怒られたものの、騒動から半年ほど経った後に真面目に活動していた杉村氏に対し、武部幹事長が「料亭に行きたいか」と尋ね、自身で料亭へ連れて行ってくれたというエピソードも。

(構成=大井明子 撮影=キッチンミノル)