お笑いコンビ・サバンナの八木真澄さんが、2024年に「1級ファイナンシャル・プランニング(FP)技能士」の資格を取得した。資格取得後は、銀行員向けにFP資格を取るための対策を話したり、経営者向けの講演を行ったりするなど、お金に関する仕事が増えたという。2025年3月には『FP1級取得! サバンナ八木流 お金のガチを教えます』を上梓[ほんださん(本多遼太朗)との共著]。「お金に関する知識は、知らないと確実に損をする」と断言する八木さんが資格取得後も続けるお金の勉強、その目的と方法とは――。
ファミリーから経営者まで。資格取得で仕事が広がる
FP1級を取って、最初に吉本興業の社員さんからお金の相談を受けました。なんばグランド花月で夜のMCの仕事が入っていたんですけど、出番前に喫茶店に行って、1時間ずつ2人の社員さんの相談に乗ったんです。舞台に上がったときはもうヘロヘロ(笑)。もちろん、社員さんにはコーヒー代だけで相談を受けています。
仕事では、お金に関する講演会の依頼がめっちゃ増えましたね。銀行員の人たち向けにFP資格を取った体験談について話したりするほかにも、いろんな方を相手に話をさせていただいています。先日行ったJAのお客さんに向けた講演会は、一緒に軽い運動をしてから相続税の話なんかをしました。あとは商工会議所や青年会議所で、経営者の方々が相手ということもあります。
住宅展示場での仕事はファミリーが対象ですね。オファーをいただいたときに、クライアントの担当の方に僕の住宅購入に対する考え方を伝えたんですよ。「現在のようなインフレ時代に住宅ローンを組むならなるべく固定金利がいいですよ」とか、「団信(団体信用生命保険)はコスパのいい生命保険ですよ」とか、「雨漏りや水回りのトラブルを考えたら、中古の戸建てより瑕疵保険が延長で最大20年間利く新築の戸建てのほうがお勧めですよ」とか。マンションは今、投資の対象になっていて価格が高いですが、戸建てはそこまで上がりきってないですし、賃貸だと高齢になった際の貸し渋りリスクがある。そういうわけで、僕は新築戸建て推しなんですが、クライアントのニーズと合致するところが多く、「その方向でお願いします」とすんなり決まって、ありがたくイベントをさせていただいています。
中には、背筋が寒くなるような依頼もあります。この間も、ある業界団体の方から依頼があって打ち合わせしたんですけど、「当協会の売上が下がっているから売上アップの方策と、若手の人材を今後どうやって集めていくか。今回はその2点を話してほしい」という依頼でした。僕は業界の仕組みも知らんし、正直焦ったんですけど、相手の方は、僕のことをなんとなく「お金の専門家」やと思っているんですよね。でも、「それは知りません」とは言えないので。そういうときは、お金のいろいろな話題を手作りでパネルにしているので、それを持っていって「例えば、会社の方やったら……」と、ハマるやつをハメていきます。「エンジェル税制(※)」とか、経営者の方にも意外と知られていないようなお金の知識って結構あるんですよ。
妻が行政書士試験に合格! 勉強の教え合いで夫婦の関係が進化
FP1級といっても、僕は企業の税金とか決算の知識がないじゃないですか。日々勉強しておかないと全然ついていけなくて……だからお客さんが求めていることに応えられるように、幅広く勉強しているところです。
実は今年の1月、うちの奥さんが行政書士試験に合格したんですよ。もともと宅建の資格を持ってたんですけど、僕がFPの勉強を始めたので「じゃあ一緒に勉強しよう」となったんです。勉強って人によって得意・不得意があって、僕は数字は入ってきやすいけど、国語が苦手なので法律の文章とかは頭に入ってきにくい。奥さんはその逆なんです。
例えば僕は今、民法を勉強しているんですが、全然わからないんですよ。奥さんは行政書士にとって重要科目の民法が得意だから、仕事の合間にLINEでお互いに質問したり教えたりして勉強しています。僕が仕事で東京にいるときは関西の自宅とリモートでつないで「この問題がわからんから、ちょっと教えてくれ」という感じでやっています。勉強するとき、「人に教える」ってめっちゃ大事で、教えることで自分自身の理解も深まるんですよね。
勉強のスタイルもそれぞれ。僕はリビングのテーブルですけど、奥さんはいつもヨギボーに寝転がって勉強してますね。椅子に座ったのはテスト当日だけでした(笑)。でも、互いに教え合いながら勉強するようになって、お互いに相手をリスペクトするようになりました。夫婦の関係が進化したような気がします。
資格の勉強ってマラソンと似ていて、マラソンをやっている人は、しんどいことがめっちゃわかるから他のランナーに対してリスペクトする。資格でも同じですよ。上位資格を持っている人は、下位資格を持っている人に対してもリスペクトがあると思うんです。資格の難度の高低にかかわらず、勉強を頑張っていることは一緒ですからね。
ただ、ウチは子どもに「勉強しなさい」とは言わないですね。長男は中学受験を控えているんですけど、子どもが勉強するってなかなか難しいんですよ。だから受験に関しては「受かったところが適正値」やと思ってます。たとえ第1志望に合格しなくても、受かった学校で中1からまた頑張ったらいい。勉強は一生続くものですからね。
お金に関する知識は、知らないと確実に損をする
今年3月に書籍『FP1級取得! サバンナ八木流 お金のガチを教えます』[ほんださん(本多遼太朗)との共著]が発売されました。お金をテーマにした本としては2冊目になります。前作の『年収300万円で心の大富豪』では、主にお金に対する心の持ちようについて紹介しました。今回は、FP1級に向けて勉強をする中で「これは使えるな」と思ってメモをしていたものから100個を選んでまとめた本で、お金のしくみや知識について、より具体的に紹介しています。
サバンナ 八木真澄、ほんださん(本多遼太朗) 著/KADOKAWA/本体価格1,600円+税
FPの資格って、3級は「知らないとヤバい、資格を取らなくても誰もが勉強するべき」内容なんですけど、1級はめっちゃ難しくて専門的なんです。今回は、その1級の知識の中から「リアルで使えるお得なヤツ」を凝縮して、お金に関するテクニックの知られざる穴を見つけにいった「攻めた一冊」と言えると思います。
お金に関する知識って「早く知っておくに越したことはない」どころの騒ぎじゃない。知らないと確実に損をするんです。例えば「所得金額調整控除」って知ってます? 年金をもらいながら働いている人には、所得金額調整控除が適用されて、所得金額から10万円が控除されるんです。これなんか自分が年金を受け取る前に知っておかないといろいろと損ですよね。
あと、僕が驚いたのがiDeCo のルール変更。2025年の税制改正で、iDeCoの受け取り時に適用される「5年ルール」が「10年ルール」に変更されたんです。これまでの「5年ルール」では、一時金を受け取った後、5年以上経過してから退職金を受け取れば、それぞれに対して別々に退職所得控除を適用できたんですけど、新しい「10年ルール」では、この経過期間が5年から10年に変更されるんです。例えば60歳でiDeCoを受け取って、65歳で退職金を受け取る予定の人は、退職所得控除を満額利用できないので、その分税金が増えることになるんですよ。
これって、めちゃムズい話でしょ。「自分が何歳でいくらの退職金を受け取れるのか」がわからないと計算できない。さらにややこしいことに、iDeCoは自分で運用しているから、この金が30年後になんぼになっているかなんて誰も読み切れないじゃないですか。
僕、このiDeCoのルール変更のおかげで、世の中のFPのニーズがめっちゃ増えると思ってるんですよ。個人個人のケースに応じてアドバイスをする必要がありますからね。今後は僕も、一般の人たちを50人くらい集めて、「うちの場合はどうしたらいいですか?」という質問に答えるような仕事ができたらいいなと思っています。だからやっぱり勉強は一生必要ですね。
(取材協力=サバンナ 八木真澄、構成=梅澤 聡、撮影=キッチンミノル)
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