【FV】サバンナ八木1

今年6月、『年収300万円で心の大富豪』(KADOKAWA)を上梓した、お笑いコンビ「サバンナ」の八木真澄さん。この本は、自身を律するためにコツコツ書きためたマイルールの中から生まれたものだという。難関資格であるファイナンシャル・プランニング(FP)技能検定1級の学科試験合格という目標を達成した八木さんに、「勉強を続けるコツ」、そして「お金に対する心構え」について聞いた。

1日1個、お金のTIPSを書きため、400個から75個を選んで書籍に

僕の著書『年収300万円で心の大富豪』では、お金に対する考え方やお金の使い方に関するテクニックを紹介していますけど、これは元々、自分自身のために書きためたルールの中から75個を選んで本にまとめたものです。

『年収300万円で心の大富豪』書影
『年収300万円で心の大富豪』
サバンナ 八木真澄 著/KADOKAWA/本体価格1,600円+税

僕は、19歳で芸人を始めた頃から、お金について「マイルール」を作ってました。芸人の仕事に安定はないですからね。レギュラー番組が10本ある人でも、1年後にはゼロになっている可能性もある。サラリーマンは厚生年金や労災保険、退職金があるから、あまり工夫しなくてもすぐに困ることはないでしょう。でも僕らみたいな個人事業主は、万一のことが起こったら、たちまち路頭に迷ってしまうんです。そこで、ある時期からそのルールを書き留めるようになりました。今では400個以上になっています。

価値を10倍と思い込む、サブスクができた時点で人類平等、金持ち自慢をする人にはおごってもらう、びっくりするくらい自分で自分を褒める……本に掲載した75個のルールのうちの一部ですが、いずれも芸人になってから時間をかけて自分に言い聞かせてきたことです。こういう身の振り方がめちゃくちゃ大事なんです。そうしないと僕は成立していないし、それができたから今ここにいるだけの話です。

僕、毎日コツコツ続けることは苦にならないんです。決して継続が得意だったわけじゃなく、不器用だから継続しなければいけなかっただけですけどね。17歳のときに書き始めた日記は今でも続いていて、その日に食べたものもずっと記録してますし、30歳からは「文章を毎日必ず書く」と決めて、毎日400字くらい書いています。

きっかけは「テーマは何でもいいから、毎日エッセイを書くことで文字に慣れる」という勉強法を知ったことです。それを10年続けたら、初めてトークで人を笑わせることができた。うれしかったですね。365日×10年で3000話以上。書くことで国語力が高まり、どんな構成で話したら笑いが取れるか、見えてきたものがあったんです。

だから、FPの試験勉強も、苦しいと思ったことはなかったです。勉強しながら、苦痛を感じないやり方を自分の中で作っていったんです。例えば、「テスト前も、テスト後も、ルーティンを変えない」とか。普通はテストが近づいてくると緊張で心が揺れるじゃないですか。だからこそ同じルーティンで、日々淡々と勉強を続けます。テスト当日も、「今日はテストという勉強がある」と考えるんです。前日もいつものようにお酒を飲むし、テスト後の自己採点もしない。結果も気にしない……テストを受けるという感覚そのものをなくしてしまうんです。

お金のマイルールと同様に、新しく思いついた勉強法を毎日1個ずつスマホに書き留めていったら、こちらも400個以上になりました。いつか『世界一ゆるい勉強法』として本にまとめられたらいいなと思っています。

30歳で「株式投資の怖さ」を知り、お金の勉強をスタート

わが家の家計は、僕がすべて管理しています。奥さんはお金の管理がまったくできない人なんです。僕と結婚するときに200円しか持ってなかったような人ですから。

結婚する前は百貨店に勤めていたんですけど、就職して初めてのボーナスを受け取ったとき、気が大きくなったのか、タクシーで家に帰ったって言うんです。タクシー代は7000円。会社の人たちはビビってたらしいです。結婚後も、UFOキャッチャーをやりまくったりとか。あの人にお金を預けたらホンマに危ないんですよ(笑)。だからお金に関する決定権は100%自分。この点は奥さんも納得してくれています。

資産運用については、30歳の時から日本経済新聞を読み始めて興味を持ちました。最初は為替だったんですが、その後、株式投資を始めたんです。まだ知識もないから、「何でもいいから個別株で」と思ってある企業の株を98万円で買ったんですけど、リーマンショックで暴落して10分の1以下になりました。負けるときはびっくりするくらい負ける……株式投資の怖さを思い知りましたね。そこから本格的にお金の勉強を始めたんです。

サバンナ八木氏_前半本文
「お金はあればいいってものじゃないんです。お金は魔力なので人を変えてしまう。適度がいいと思っています」と語る八木さん。「お金を稼ぐことで、礼儀や自己形成など自分自身が磨かれると思うんです。でも、いきなり持ってしまったらどこか横柄なところが出てしまう。僕はそういう人を見てきましたから」と続ける。

今年から新NISAが始まって、周りから投資のことを聞かれるようになりました。先日も、相方(高橋茂雄氏)がやっているYouTubeチャンネルに「NISAについて教えてくれへんか?」っていうので出演したんですけど、そこで話したのは「NISAというのは、単に『投資で得た利益が非課税になる制度』のことやから、あまり意識しないほうがいい」ということ。

いまはオルカンやらS&P500が大人気ですけど、外国株は為替変動があるから怖い。僕はホンマにそう思うんですよね。もちろん「投資は自己責任」なので一概には言えませんが、税金がお得になるからといって、退職金などまとまったお金を全部ぶちこむというようなやり方は避けたほうがいいんじゃないかなと思います。

「若いうちから将来を想定しておく」ことが、幸せへの道

読者の人たちに僕からアドバイスするとしたら、「いつまでも稼げると思わないほうがいい」ということですね。

僕は30歳の頃から約20年間、サラリーマンの友達と毎日メールの交換をしていて、その世界のことを教えてもらってるんですが、多くの人は、20代で社会人になり、30代で仕事を覚えて、40代で責任ある仕事をし、55~60歳でいったん退職金をもらって、再雇用で収入が70%ぐらいになりますよね。

僕も同じです。19歳で芸人になり、34歳で東京に進出し、37歳ぐらいまではテレビにたくさん出ていましたが、50歳の今は「たまにテレビで見かける人」だと思います。一見、寂しいように感じるかもしれませんけど、僕の中では想定内です。あと5年もすれば、たまにも見かけなくなると想定しています。

また、「今のポジションや肩書も、長くは続かない」と思っておいたほうがいい。サラリーマンは、再雇用されて子会社にいったり関係性が逆転して「かつての部下が上司になる」なんてことがあるじゃないですか?

芸人の世界でも、後輩が人気者になり、番組MCになって、先輩がいじられ役になるようなことはよくあります。だからこそ、若いうちから先輩も後輩もなく、常にニュートラルな関係でいることが肝心なんです。

大切なのは「将来を想定しておく」こと。いいときに、この状態がいつまでも続くと思わないことです。稼げるときに、むやみに生活レベルを上げてしまうと、きっと後になって後悔します。将来、「心の大富豪」になるために、ぜひ僕の本を読んでみてください。

(取材協力=サバンナ 八木真澄、構成=梅澤 聡、撮影=キッチンミノル)