【FV】わが子を億万長者に育てる方法2.png

新NISAは非課税期間の制限がないため、長期投資が可能な制度だ。わが子を億万長者に育てたいならば、長期保有のメリットを最大限生かせるよう、早いうちから積み立て投資を開始させた方がいい。そうすれば、前回の記事にあるとおり 18歳から始めて40代で1億円を達成することも夢ではない。では、そのために選ぶべき商品とは――。

1億円への第一歩、長期投資の原則は「分散投資」

まず考えるべき原則は「分散」だ。1つの商品だけに集中して投資すると、もしその商品の価値が下落した場合に、資産が大幅に目減りしてしまう。しかし値動きが異なる複数の商品に分散して投資すれば、ある商品が下落しても、ほかの商品でカバーできる可能性が高くリスクヘッジになる。

そこで、「分散投資」という視点で、ファイナンシャルプランナーの田中香津奈さんに、積み立て投資の例として7商品を挙げてもらった(図表)。1から6までは、全世界株式、先進国株式、米国株式からそれぞれアクティブファンド、インデックスファンドを1商品ずつ。そこに番外編として1商品が加わる。

田中香津奈さんによる分散投資を目的とした「新NISA積み立て投資例」7選

商品分類 スタイル 商品名 信託報酬
(税込み・%)
純資産
総額
設定日 特徴
(投資先の国別内訳、
ベンチマークなど)
1 全世界株式 アク
ティブ
キャピタル世界株式ファンド(DC年金つみたて専用) 1.08500% 901億円 2016年
4月21日
アメリカが60%弱、新興国も含む(10%未満)。つみたて枠専用の商品であり、成長投資枠で同様の商品を購入する場合の信託報酬は1.701%。
2 インデックス eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー) 0.05775% 3兆
4654億円
2018年
10月31日
アメリカが60%強、新興国も含む(10%未満)。ベンチマークはMSCI オール・カントリー・ワールド・インデックス。「eMAXIS Slim 全世界株式(除く日本)」という商品もあるため、商品購入時には注意が必要。
3 先進国株式 アク
ティブ
モルガン・スタンレー・グローバル・プレミアム株式オープン(為替ヘッジなし) 1.98000% 3318億円 2012年
2月17日
アメリカが70%強、新興国を含まない。20~40銘柄のプレミアム企業に集中投資を行う。
4 インデックス eMAXIS Slim 先進国株式インデックス 0.09889% 7538億円 2017年
2月27日
アメリカが70%強、新興国・日本を含まない。ベンチマークはMSCI コクサイ・インデックス。
5 米国株式 アク
ティブ
フィデリティ・米国優良株・ファンド 1.63900% 1394億円 1998年
4月1日
アメリカが100%。米国優良企業に投資。
6 インデックス eMAXIS Slim 米国株式(S&P500) 0.09372% 4兆
6264億円
2018年
7月3日
アメリカが100%。ベンチマークはS&P500指数。
7・番外編 全世界株式 インデックス インベスコ 世界ブロックチェーン株式ファンド(愛称:世カエル) 1.57300% 172億円 2019年
7月11日
ブロックチェーン関連企業への投資。
ベンチマークはコインシェアーズ・ブロックチェーン・グローバル・エクイティ・インデックス。
※2024年5月29日現在。田中香津奈さんの話をもとに編集部作成。

「オルカン」といいつつ、投資先の6割強がアメリカ

7選のうち、eMAXIS Slimシリーズから3商品が挙がっている。いずれも運用管理費用(信託報酬)が0.1%以下と非常に低く、総資産を大きく伸ばしている人気商品だ。中でも「オルカン」と呼ばれる「オール・カントリー」や「S&P 500」は、「新NISAでお薦めの商品」というと必ずといっていいほど名前が挙がる。総資産額が大きいため、運用が途中で終了する繰り上げ償還リスクの可能性が低く、長期投資にも適しているといえる。しかし田中さんは、こうした商品“だけ”に集中投資する姿勢には疑問を投げかけ、「資産構成比や組入銘柄をよく確認してほしい」と言う。

「オルカンは、『全世界株式』と銘打っていることから、世界各地の株に分散投資をしている商品であるような印象を受けますが、投資先の国別内訳を見ると、アメリカが6割強を占めています。つまり、オルカン一択では分散投資にはなりません」と指摘する。

同様に、S&P 500はすべて、先進国株式は約7割が投資先をアメリカとする。多少の差はあれ、いずれもアメリカの市場動向の影響を大きく受けることになり、「大きくは似たような値動きになります」と説く。

さらに、組入銘柄の上位を見ると、これら3つのファンドはいずれも、7位前後まではほぼ同じ顔ぶれ。マイクロソフト、アップル、半導体メーカーのエヌビディア、アマゾン、アルファベット(グーグルの持ち株会社)、メタ(旧フェイスブック)などが並ぶ。

「異なるファンドですが、実際はどれも、こうした『マグニフィセント・セブン』の銘柄に投資しているといえます」と田中さん。マグニフィセント・セブンとは、米国株式市場を牽引している、GAFAM(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン、マイクロソフト)にエヌビディア、テスラを加えたハイテク株7銘柄を指す。つまり銘柄も似通っており、本当の意味での分散にはなっていないのだ。

インデックスとアクティブを組み合わせ、最強のポートフォリオに

投資信託とは、ファンドマネージャーに資産を信じて託すことだが、運用スタイルは大きく分けて2つで、インデックスとアクティブがある。

インデックス/アクティブは、投資信託商品(ファンド)の運用方針の違いを表しており、一般的に初心者にはインデックスファンドが薦められることが多い。リストに挙がっているeMAXIS Slimの3商品は、どれもインデックスファンドだ。

インデックスファンドは、日経平均株価やTOPIX(東証株価指数)、S&P 500など、指数に連動した運用成果を目指している。銘柄選定に手間がかからない分、手数料である信託報酬が安く抑えられている。一方アクティブファンドは、指数以上の運用成績を目指すもので、ファンドマネージャーが選定した銘柄を中心に運用するので、信託報酬は比較的高い。

「分散投資」を考えると、前述のオルカンやS&P 500、先進国株式に投資する場合、低コスト運用にこだわったインデックスファンドだけでなく、違う値動きをするアクティブファンドを組み合わせるといい。「上昇局面ではインデックスファンドが強いですが、下落局面に抵抗力があるアクティブファンドを組み合わせるのもよい」と田中さんは話す。

「投資の世界では、『アクティブファンドはインデックスファンドに勝てない』などと言われることが多いです。しかし実際は、インデックスファンドよりも実績を上げているアクティブファンドもあります。上手に選べば、長期保有に適した運用実績となる可能性があります」と田中さんは説明する。

7選では、アクティブファンドの中でも比較的長期にわたって実績を残している商品を例に挙げてもらった。「全世界株式のアクティブファンドとして例に挙げた『キャピタル世界株式ファンド』は50年を超える運用実績があるファンドシリーズで、米国籍アクティブファンドの純資産残高においては運用会社別ランキングで1位となっていますが、日本ではあまり知られていません」(田中さん)。

この商品を新NISAの「つみたて投資枠」で積み立てて保有した場合、課税口座で同様の商品を購入する場合と比べて、信託報酬が3割カットされるという。同じファンドであるにもかかわらず、だ。運用益が非課税になるだけでなく、より低コストで購入し、運用できるのであれば活用する価値がある。

また、新NISAではクレジットカードを用いた積み立てが可能な証券会社もある。2024年春に行われた金融商品取引業等に関する内閣府令の改正を受けて、クレジットカード払いによる積み立て投資の上限額が、月10万円まで引き上げられた。

「証券会社とクレジットカードの組み合わせは、手数料の削減やポイント還元率を最大化するために重要です。」(田中さん)。

クレジットカードでの積み立てをする場合、ポイント付与率はアクティブファンドの方が高くなる証券会社もあるので、上手に活用していきたい。

世間の論調、「テーマ型ファンドはNG」は本当か?

「7・番外編」には、「オルカンとは異なる動きが期待できるファンド」(田中さん)として、成長投資枠で購入可能な「インベスコ 世界ブロックチェーン株式ファンド(愛称:世カエル)」が挙がった。これは、インターネットに次ぐ技術革新として注目されるブロックチェーン技術の拡大に着目したファンドだ。

「値動きが激しいビットコインそのものに投資するのではなく、ブロックチェーン技術の関連企業に投資するものなので、ビットコインに比べると値動きは緩やか。それに加えて、図表に挙げた1から6までの商品とは異なる動きをする可能性があります。『特定のテーマに沿った銘柄に投資するテーマ型ファンドは難しい、避けるべき』という論調もありますが、商品を厳選した上でポートフォリオに組み入れるのは、分散投資を実行するための方法の一つです」と田中さんは話す。

イギリスの格言「一つのかごにすべての卵を盛るな」にあるように、株式だけでなく、異なる値動きをする商品に分散することで、リスクの軽減対策となる。代表的な金融商品として、金(ゴールド)があるが、保管や換金に手間がかかることで躊躇する人も多い。それゆえ、金ETFの登場で、注目を浴び、価格が上昇した経緯がある。ビットコインも2024年1月に現物型ビットコインETFが上場し、その拡大が見込まれる。

実生活の変化をとらえながら、上手に分散投資してファンドを選んでいく。子どもを億万長者に育てるために、また金融教育の観点からも新NISAを有効活用してほしい。

(取材協力=田中香津奈、構成=大井明子)