たった200万円を相続しただけで知らぬ間に1億円の負債を背負うことに
サインしていないからと安心してはいけない
ここまで読んでいただいた方は、借金が相続されることをもうご理解いただけたでしょう。でも、「誰かの連帯保証人」という地位まで降りてくることは、ほとんど知られていません。自分はサインしていない。それだけで安心している方が多いのです。
冒頭で触れた、1億円の負債を背負ったご家庭の話です。社長を務めていた父が亡くなり、会社を継ぐ長男が「安定して経営を続けるためにも、財産はすべて自分に」と申し出ました。妹と弟は納得がいかず、それぞれ200万円だけを受け取ることで決着しました。
実は、父が社長だった頃、その会社の借り入れについて、父自身が連帯保証人になっていました。父が亡くなり、その連帯保証人としての地位は、法定相続人である長男・妹・弟の3人に引き継がれます。会社を継いだ長男が経営を続けましたが、やがて3億円の負債を抱えて倒産。連帯保証人としての責任も3人に降りかかり、妹と弟にはそれぞれ1億円の請求が来ました。
妹と弟は、父が連帯保証人になっていたことを知りませんでした。それでも、相続放棄は認められません。理由は、200万円を受け取る手続きを済ませていたからです。
たとえ少額でも、何かを受け取った時点で、単純承認を自ら選んだと判断されます。「あとから負債を知った」と言っても、相続放棄を認めてもらうのは非常に困難です。
相談者に「亡くなった方が誰かの連帯保証人になっていないか調べる方法はあるか」と聞かれることがあります。残念ながら、有効な方法はありません。地雷②でお話しした信用情報の開示請求をしても、保証人になっている情報は、原則として載らないからです。それでも取っ掛かりはあります。遺品を徹底的にチェックし、連帯保証を匂わせる契約書がないか確認しましょう。
もう一つ、いかにも保証人になっていそうな立場の方かどうかも見てください。その最たる例が、会社の経営者です。法人としてお金を借りていても、たいてい社長個人が、連帯保証人に入っています。本人でなくても、親族に経営者がいれば保証人になっていることもあります。過去に会社を経営し、倒産させた経験のある方も同じです。
身近に経営者がいなければ、過度に心配する必要はありませんが、保証人になるケースは経営者絡みだけではありません。たとえば親族が住宅ローンを組んだとき、亡くなった方が保証人としてサインしている場合があります。20年前の住宅ローンは、今より簡単に親族を保証人にできたのです。
規模の違いはあれ、連帯保証人の立場を相続して困っているというご相談は、月に数件あります。対処はケースバイケースです。保証債務があるとはっきりしていれば、資産とのバランスで放棄するかを考えます。債務があるかわからず不安だという場合は、限定承認に落とし込むことが多いです。資産があまりないなら、相続放棄で終わらせることもあります。
連帯保証人に限った話ではありませんが、相続放棄を考えているなら、3カ月は財産に一切触らない。お金が要るなら、法律上の遺産に該当しない「触っていいお金」だけを使う。それだけは、覚えておいてください。
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