「そんなことで?」と思うような一手で、相続放棄はできなくなる。知らずに踏んでしまう地雷と、その避け方を専門家に聞いた。
デジタル資産
残高を調べるだけなら問題ないが解約したら借金も引き継ぐことに

スマホが開けないと存在にすら気づけない

デジタル資産は、こちらから探さない限り存在に気づけないものです。取引報告書が郵便受けに届くわけでもなく、財布にカードが入っているわけでもない。見つからないのは、地雷②で話したような借金だけではないのです。

ただ、ネット証券なら調べる方法があります。「ほふり(証券保管振替機構)」に法定相続人が開示請求をすると、亡くなった方がどこの証券会社に口座を持っているかを、一度で調べられます。保険も同様で、生命保険協会の照会制度でまとめて確認できます。

預金については、都市銀行やゆうちょ銀行であれば、1回の照会で全国の口座をまとめて調べてもらえる仕組みがあります。一方、地方銀行や信用金庫は数が多く、この仕組みもないため、亡くなった方が実際に暮らしていた地域周辺のものに絞って調べることになります。

ただ、ネット銀行や暗号資産となると、その手順すらなく、メジャーどころに口座がないか、個別に照会していくしかありません。とはいえ、取引がスマホの中で完結しているので、端末が開けなければ状況を確かめようもなく、特に漏れやすい資産だと感じます。

財産の情報がご遺族に何ひとつない。そういうご相談もあります。たとえば、離婚して何十年も生き別れた親子間の相続です。

「父が亡くなった知らせが届いた。財産はあるらしい。でも、借金があるかはわからない」

こういうとき、私たちは「限定承認」という手続きをおすすめします。プラスの財産の額を上限として、借金を引き継ぐ、という方法です。

しかし、プラスの財産を調べようにも糸口がありません。通帳もキャッシュカードも手元にない。どの銀行を使っていたのかもわからない。そこで私たちが、先ほどお話しした順で、都市銀行から潰していきます。相談数は少ないですが、富裕層の方だと、外国の証券会社や暗号資産取引所に口座を持っている方が多いです。こうなると、潰していく手順すらなく、現地の弁護士を通じて調べたりするので、なかなか大変です。

さて、こうして口座が見つかった場合、相続放棄を検討している方は、口座の解約は絶対にしないでください。解約は、残高という資産を受け取ることを意味します。単純承認とみなされ、放棄ができなくなります。

特に注意が必要なのが、ゆうちょ銀行など一部の金融機関です。少額の口座なら、相続人のうち一人が代表として手続きするだけで、簡単に解約できてしまうからです。

(構成=村松まりこ)