豊かな人生を送るのには何が必要なのか。短期連載「捨てる技術」の第2回では、ロバート・サイモンズ名誉教授に、「人生戦略」について聞いた――。

【佐藤智恵(以下、佐藤)】会計やビジネス戦略の専門家として知られるサイモンズ教授が「世界を変えたリーダーの人生戦略」について研究しようと思ったきっかけは何ですか。

【ロバート・サイモンズ(以下、サイモンズ)】この研究プロジェクトは数年前、「戦略実行」の授業を履修していた2人の学生の好奇心からはじまりました。
「ビジネスリーダーが事業戦略を選択する際に使うフレームワークを個人の人生の選択にもあてはめられないだろうか」とふと思いつき、私のもとで独自に研究をはじめたのです。彼女たちは、オプラ・ウィンフリー(司会者)、タイガー・ウッズ(プロゴルファー)、ジェイミー・ダイモン(JPモルガン・チェースCEO)の人生戦略や人生の岐路での決断を分析し、驚くほどインサイトに満ちたレポートを書き上げました。

もしかしたら、自分がこれまで研究してきた企業向けのフレームワークは個人の人生戦略にも応用することができるのではないか――そう感じた私は新たに調査チームをつくり、「19〜20世紀に活躍した世界で最も影響力のあるリーダー100人」の中から23人を選び、それぞれの人生を研究することにしました。以来、人生戦略を実行していくうえで有効な独自の理論やフレームワークを開発し、選択科目で教えています。

【佐藤】MBAプログラムの選択科目「世界を変える:影響力のあるリーダーの人生の選択」では、どのようなフレームワークを使って、偉人や学生自身の人生を分析するのですか。

【サイモンズ】「5P」というフレームワークを使います。これは、もともとビジネス戦略の分析に使っていた枠組みを応用したものです。5Pとは、情熱型(Passion)、計画型(Plan)、信念型(Perspective)、インタラクション型(Patterns of Interaction)、地位型(Position)を意味します。

「情熱型」は1つのことに全身全霊で集中して成功したタイプです。その代表格がウォルト・ディズニーです。ディズニーは、アニメーションやストーリーの創作に並々ならぬ情熱を注ぎ、その情熱に突き動かされて前進する生き方を生涯にわたって貫きとおしました。

「計画型」は人生の要所要所で長期的な目標と計画を立て、そのとおりに実行することによって快挙を成し遂げたタイプです。この代表格がマリー・キュリーです。ポーランドの貧しい家庭で5人きょうだいの末っ子に育ったマリー・キュリーは、何とか留学したいと思い、約6年間、住み込みの家庭教師として働き、フランスで学ぶ姉へ仕送りをします。次に姉が医師となると、今度は自身がソルボンヌ大学に留学し、姉に生活費を支援してもらいました。彼女の人生にはこういった念入りな計画が随所に見られるのです。

「信念型」は「この社会を変えたい」「公正な世の中にしたい」「人間はこうあるべきだ」といった強力な信念やイデオロギーが原動力となり、世界の政治や社会に大きな影響を与えたタイプです。ネルソン・マンデラ、マハトマ・ガンジー、アイン・ランド(作家)がこのタイプにあてはまります。

「インタラクション型」は、特に情熱もなく、人生計画もなく、信念もないけれども、コミュニケーションが卓越していたため、周りの人々から多くを学び、大成功を収めたタイプです。ロナルド・レーガン、P・T・バーナム(興行師)、マダム・C・J・ウォーカー(女性起業家)などがこのタイプです。

「地位型」は、もともと富裕層や社会的地位のある親のもとに生まれ、その恵まれた環境を存分に生かして、世界的なリーダーになった人たちです。ジョン・F・ケネディ、キャサリン・グラハム(元「ワシントン・ポスト」発行者)がこのタイプにあたります。

(取材·文=佐藤智恵 撮影=Russ Campbel(l ロバート・サイモンズ名誉教授))