モノが多ければ、捨ててスッキリするほうがいい――そう思ってシンプルさばかりを求めた空間にしていないだろうか。「捨てる技術」第4回では「必ずしも少なければいいとは限らない」と語るジェラルド・ザルトマン名誉教授に話を聞いた――。

職場の匂いや明るさが仕事の成果を左右する

【佐藤智恵(以下、佐藤)】ザルトマン教授の著書『ハーバード大学ビジネススクール特別講義演習 あえて違う考え方をしろ 思い込みに囚われずベストな問題解決をするための思考法』では、ビジネスリーダーとして成功するには「オープンマインド」を持つことが不可欠だということをあらためて浮き彫りにしています。中でも「私たちの思考や心の働きは、知らず知らずのうちに周りの物理的環境から影響を受けている」という指摘が印象に残りました。優れたリーダーとして成長していくためには、なぜ職場環境にまで気を配る必要があるのでしょうか。

【ジェラルド・ザルトマン(以下、ザルトマン)】突出した成果をあげて出世していく人と、そうでない人。両者のいちばんの違いは何でしょうか。その答えはシンプルです。それは「オープンマインド」を持っているか否かです。オープンマインドとは、自分自身の考え方や判断のしかたに疑問を持ち、必要に応じて改善しようとする心構えを意味する言葉です。オープンマインドを持っている人は、優れたイノベーション力、マネジメント力を発揮し、卓越した実績をあげることができます。

ジェラルド・ザルトマン氏
ジェラルド・ザルトマン Gerald Zaltman
ハーバードビジネススクール名誉教授。米コンサルティング会社オルソン・ザルトマン・アンド・アソシエイツ共同創業者兼シニアパートナー。専門は消費者行動およびマーケティング戦略。『心脳マーケティング 顧客の無意識を解き明かす』(ダイヤモンド社)、『ハーバード大学ビジネススクール特別講義演習 あえて違う考え方をしろ 思い込みに囚われずベストな問題解決をするための思考法』(SBクリエイティブ)など著書多数。

では、どのようにすればオープンマインドを身につけることができるのでしょうか。「マインド」は「脳」で形成されると思われるかもしれませんが、実は、私たちの考え方や心のあり方は、①物理的環境、②社会的・文化的環境、③身体の働き、④脳の神経細胞の働きから影響を受けています。これら4つの要素が無意識下で組み合わさって「マインド」を形成するのです。オープンマインドを習得し、組織で卓越した結果を出す人になりたいと思えば、意識して、自分にとって最適な物理的環境を構築しなくてはなりません。

私たちが普段、仕事をしているスペースの空間的広がり、周りに置いてあるモノ、五感を刺激する音や光などは、無意識のうちに、私たちの考え方や心のあり方に影響を与えています。つまり、物理的環境に気を配るとは、自身の思考に気を配ることなのです。

【佐藤】 会社や自宅のワークスペースの物理的環境は、私たちの思考にどのような影響を与えているのでしょうか。

【ザルトマン】 物理的環境が自身の考え方や心のあり方にどう影響を与えているのかについて、普段、意識することはないでしょう。よく混同しがちですが、考えることと知ることは違います。無意識下で様々なアイデアを結びつけるのが「考える」、意識下で認知するのが「知る」です。

私たちの思考が無意識のうちに行われているからといって、軽視してよいわけではありません。むしろその逆です。時として、無意識の思考が意識に上がり、ひらめきにつながることもあるからです。

私たちの考え方や心のあり方は、先ほど申し上げた4つから影響を受けながら形成されていきますが、その中でも物理的環境は非常に強力な認知刺激を与えます。

例えば天井の高さ。天井の高い部屋は抽象的思考を促進し、天井がそれほど高くない部屋は細かな分析作業に向いていることが明らかになっています。抽象的思考を必要とする仕事に従事している人に天井の低い部屋を割り当てれば、その人は能力を十分に発揮できなくなる可能性があります。

目に入るモノの色の選択も重要です。暖色はエネルギーを高め、社会的なつながりや連想思考を促します。一方、寒色は集中力、内省力を向上させ、分析的な作業によい影響を与えると言わています。

(取材・文=佐藤智恵 写真=Evgenia Eliseeva(ジェラルド・ザルトマン名誉教授))

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