よかれと思った一手が選択肢を消していく
相続放棄という選択肢が消えるのは、たいてい、深く考えずに打ってしまった一手が原因です。たとえば、会社を経営していた父から200万円を相続した3年後、覚えのない1億円の借金を背負った方もいます。結局、相続放棄はできませんでした。
なぜでしょうか。相続放棄が認められなくなるパターンは3つあります。1つ目は、財産に手をつけてしまうこと。民法上の「処分」にあたる行為です。2つ目は、放棄を決める3カ月の期限を過ぎてしまうこと。3つ目は、放棄後に財産を隠したり使い込んだりすることです。
なかでも気をつけたいのが、1つ目の「処分」です。よかれと思ってした行動が、相続を受け入れたと判断されるのです。財産に手をつけていいかの判断軸は2つです。1つは「資産価値があるか」。もう1つは「そもそも法律上の遺産に該当するか」です。
ただ、つまずく原因は処分だけではありません。よくある地雷をこれから5つお伝えします。冒頭の1億円の借金のケースも出てきます。まだ何もしていない人は、何をしてはいけないのか。すでに動いてしまった人は、何をすればいいのか。ご自分の状況と照らし合わせてみてください。
故人の口座からお金を引き出すとその瞬間、相続放棄はできなくなる
葬儀社の助言や形見分け 気づかぬうちに一線越える
「亡くなった親の口座から預金を引き出してもいいか」という相談は特に多いです。次いで、不動産や車の処分、医療保険給付金の受け取りです。
「遺品整理をしてもいいか」も、よく受ける相談です。いけないのは、資産価値があると思われる遺品に手をつけることです。資産価値の有無は、「買取業者が買い取ってくれるか」で考えるとわかりやすい。たとえばロレックスの腕時計やブランド物のバッグを形見として受け取る、売却する、捨てる。どれもアウトです。冒頭でお話しした通り民法上の「処分」にあたり、自分が相続人だと認めたことになる。これを「単純承認」といいます。
実務で怖いのは、この処分をめぐって債権者(故人に対して借金の返済などを請求する権利を持つ人・会社)と裁判で争いになることです。債権者側が処分の事実を立証すれば、「その放棄は無効だ」と主張できます。
ただ、亡くなった方の身の回りに何があり、どのように処分されたかを債権者側が証明するのは、実際には難しいです。とはいえ、争いになれば負ける可能性はある。だから、原則は「触らない」です。
では、遺品整理をしたい場合、どうすればいいか。とにかく資産価値のあるものには触らず、そのまま保管してください。相続放棄した後、次の相続人や国に引き渡すことになります。
すでに遺品整理を終えてしまった場合は、諦めずに専門家に相談してください。何を処分したのか、価値はあったのか。事案ごとに判断は変わるので、解決できるケースもあります。
ここから先は有料会員限定です。
登録すると今すぐ全文と関連記事が読めます。
- 広告最小化で快適な閲覧
- 雑誌『プレジデント』が最新号から読み放題
- ビジネスに役立つ学びの動画が見放題
- 会員限定オンラインイベント



