中国経済をめぐり、アメリカのメディアが対照的な報道をしている。新刊『習近平は何を恐れているのか?』(ビジネス社)を上梓した評論家の白川司さんは「中国が石油危機と燃料不足をしたたかに乗り切ったという見立ては正確ではない。ホルムズショックが中国経済の需要不足を加速させて、デフレを悪化させたと考えられる」という――。
上海協力機構プラスの会合で、重要演説を行う中国の習近平国家主席=2026年9月1日
写真=ABACA PRESS/時事通信フォト
上海協力機構プラスの会合で、重要演説を行う中国の習近平国家主席=2026年9月1日

原油輸入量を半分に削減できた理由

「中国は、イラン戦争が引き起こした石油危機を巧みに乗り切った」とウォール・ストリート・ジャーナル(以下、WSJ)が8月24日の記事で報じている。

同紙は、世界最大の原油輸入国である中国が、輸入を約5割も削減しながらインフレを抑え込み、世界経済の安定に貢献したと評価した。

燃料の輸出規制で製油所の稼働を落とし、値上がりを嫌った旅行者が飛行機を控え、石炭への転換が奏功し、戦争前に積み上げた備蓄を取り崩した。これらを、「中国当局のしたたかな対応策」として紹介している。

だが、この記事には最も肝心なことが書かれていない。それは「中国経済が深刻な需要不足に沈んでいて、燃料需要が急速に落ちている」ということだ。

海外メディアの対照的な中国像

輸入を半分に減らせた中には、「巧みに工夫した」分があったのは確かだろう。でも、「工夫」で「半減させる」のはさすがに現実的ではない。

2024年の中国における石油系燃料需要は日量約810万バレルと、2021年を2.5%下回り、2019年との比較でもほぼ横ばいにとどまった。エネルギー消費に占める割合は石炭が50%以上を占め、石油は約18%であるとはいえ、2026年現在の中国経済は、燃料を半分に減らしてもさほど困らないほど、需要不足に陥っていると考えるべきだろう。

※IEA「Oil demand for fuels in China has reached a plateau」(2025年3月11日)

実際、ブルームバーグは「イラン戦争は、中国の石油需要がどれほど失われ、そして二度と戻らないかもしれないかを、白日の下にさらした」と指摘している

WSJが「燃料不足を巧みに乗り切った大国」と描く一方で、ブルームバーグが「燃料不足が、さらに需要を落ち込ませた」と静かに崩れていく需要のリアルを描き、その像はかなり対照的だ。

では、WSJとブルームバークの2つの見方のうち、どちらが現実に即しているのだろうか。