3.11後、失敗を繰り返した民主党政権
また、2011年の東日本大震災と原発停止による電力不足だ。価格ではなく物理的な供給制約として経済を襲った。計画停電、工場の稼働縮小、商業施設の時短。企業の設備投資意欲は凍りつき、「電気を使ってはいけない」「贅沢は控えるべきだ」という自粛ムードが旅行・外食・娯楽への支出を蒸発させた。
今回のWSJ記事が中国について描いた「旅行者が減った」という現象を含めて似たところが多いと感じる。
だがこのとき、民主党政権が選んだのは「締める」方向だった。復興のための増税を決め、本格的な金融緩和は2013年の安倍晋三政権まで持ち越された。
また、震災直後の日銀は一連の対策は小粒なものにとどまり、需要を埋め戻す総力戦にはならなかった。それどころか、当時の菅直人政権は、冷え込んだ日本経済を立て直す政策をしなければならなかったのに、「日本をギリシャにするな」と叫んで、消費税増税に踏み切ろうとした。まさに「狂気の沙汰」だった。
前例のない複合危機のなかで、どの政権でも対応は困難だったろうが、デフレ下の供給ショックに対して需要を締める側に動いたことは、一時的なショックを慢性的な需要不足へと固着させる方向に働いた。
中国は金融緩和したくてもできない
この三つの事例が教えるのは、「外部ショックは引き金にすぎず、それを本格的な不況に変えるのは、需要減を無視した引き締め政策である」ということだ。
その点で、小渕政権は遅まきながら適切に、麻生政権はすばやく適切に対応したが、橋本政権や民主党政権は不適切にも財政を締めて泥沼を深めたのである。
中国はいま、日本が三度直面したのと同じ局面に立っている。需要不足が進むなか、ホルムズショックという外的ストレスを受けた。過去の日本の教訓に照らせば、大規模な金融緩和と財政出動に動くべき場面だ。
ところが、中国は、緩和したくてもできないのだ。日本の失敗が「財政・金融引き締めという誤った選択」だったのに対し、中国の困難は「財政・金融緩和という選択肢そのものを封じられている」のである。
その理由は三つある。

