利下げすれば、人民元は下落する
第一に、人民元安と資本流出という桎梏だ。中国が景気を下支えしようと利下げに踏み切れば、米中の金利差が広がり、資金は高い利回りを求めて国外へ流れ、人民元は下落する。資本流出と通貨安が加速すれば、金融システムそのものが揺らぐ。
中国人民銀行は、利下げをしたくても下げ幅を0.1%刻みに抑えざるを得ず、人民元安を嫌って利下げを見送り、預金準備率の小幅な引き下げでお茶を濁す。
景気は緩和を求めて叫んでいるのに、通貨が緩和を許さないというのが、今の中国政府だ。そこが、1997年と2011年の日本との根本的な違いである。
第二に、中国は資源の輸入国であることだ。金融緩和を実施して人民元安にすれば、輸入原油の価格を押し上げることになる。石油ショックのさなかに緩和することは、自らの手で石油高を悪化させることを意味する。
要するに、中国にとって石油ショックが需要を削る一連の外的ショックの一つに過ぎないからからこそ、金融緩和ができないわけである。ホルムズ海峡が閉ざされ原油が高騰したこの局面は、中国にとって、事実上ベネズエラを失った以上、需要不足を埋める最後の手段を封じられる局面でもあった。
異次元緩和を選べた日本との決定的違い
第三に、中国の金融政策の伝達機構そのものが未成熟で、国債市場の価格発見機能が乏しく、緩和が長期金利の乱高下を招くリスクがあることだ。
それに加えて、民間への貸出を絞った銀行が余剰資金を国債に振り向けるため、供給された資金が実体経済ではなく国債市場に吸い込まれてしまう。仮に緩和できたとしても、効きが鈍い。日本の異次元緩和を選べたが、中国はその基盤自体が発達できていないのである。
もちろん、中国に打つ手がまったくないわけではない。国有銀行への公的資金注入、預金準備率の引き下げ、超長期特別国債の発行、財政面の下支えなどは、現に行われている。
だが、需要を直接刺激する最も有効な武器である利下げが、元安と資本流出という外的制約によって封じられ、残された手段は効きが鈍く、規模も抑制的にならざるを得ない。
