需要がどんどん減っていく負の連鎖
ここまでのことを「三層」の問題として考えると、次のようになる。
第一層として、もともと深刻な需要不足があり、EVがガソリン需要を恒久的に置き換えていた。だから石油輸入を半減させても経済は回った。不足を乗り切ったのではなく、もともと減っていたというわけだ。
第二層として、その需要不足に外的ショックが重なったとき、日本が過去に犯した「悪いタイミングで需要を締める」誤りを、中国はより大きな規模で反復しつつあることだ。
第三層として、中国には締めるどころか緩めることすらできない構造的な縛りがある。そしてホルムズショックは、人民元安を伴ってその縛りをさらに強化している。
需要が弱いから物価が上がらない。物価が上がらないから、企業は値上げできずマージンを削り、賃金を上げられない。賃金が上がらないから家計は財布を締め、需要はさらに弱る。そこへ石油高が実質所得を追加で削り、しかしそれを和らげる緩和は封じられている。
「したたかな国」→「泥沼にハマった国」
象徴的なのは、中国の石油精製業界そのものが再編局面に入りつつあることだ。ロイターによれば、中国では燃料需要のピークアウトによって製油所の利益率が急低下し、今後10年間で総能力の1割近くが閉鎖対象になる可能性があるという。山東省の独立系製油所の稼働率は約54%と、コロナ禍を除けば過去最低水準近くまで落ち込んでいる。
※Reuters「China's vast refining sector faces shakeout as fuel demand peaks」(2025年1月17日)
高度成長期の中国であれば、石油が足りないことが問題だった。だが、今日の中国では、石油を処理する設備のほうが余り始めている。これは供給不足ではなく、需要不足の経済に特有の現象である。中国はホルムズショックを乗り切ったのではなく、ホルムズショックが中国経済の需要不足を加速させて、デフレを悪化させることになったと考えられる。
WSJが描く「したたかな中国」は中国を一方的に見た「虚像」に過ぎない。なぜWSJにはそれが「実像」に見えるのかに対して、私には「人間は自分の見たい現実しか見ない」(カエサル)という言葉しか思い浮かばない。
検索時にプレジデントオンラインに関連する記事が表示されます

