「そんなことで?」と思うような一手で、相続放棄はできなくなる。知らずに踏んでしまう地雷と、その避け方を専門家に聞いた。
不動産
売れない、壊せない、手放せない なのに名義変更だけで一発アウト

相続登記の義務化により名義変更をする人が急増

不動産を相続するかどうか迷っているなら、名義変更はやってはいけません。自分に名義を変えた時点で、あとから放棄したくなってもできなくなります。登記は公開情報なので、債権者も簡単に調べられます。記録が残れば、放棄はまず通りません。

それなのに、慌てて名義を変えてしまう方が増えています。2024年に始まった「相続登記の義務化」の影響です。一定期間、遺族名義に変えずに放置すると10万円以下の過料が課されると聞き、手続きをしてしまうのです。

しかし、アウトになるのは、名義変更だけではありません。建物の解体も、民法上の「処分」にあたります。取り壊した時点で、自分が相続人だと認めたことになるのです。

見た目は資産なのに、持っているだけでお金が出ていく。そういった不動産を「負動産」と言います。「そのうちお金になるだろう」と考えて、深く考えずに相続してしまう方は多いです。

「負動産」の代表例が、田舎の山林や農地です。ほとんど売れず、相続すれば持ち続けることになります。農地なら、草が生えれば、近隣の農家の方から除草するよう言われます。業者を入れれば、そのたびに費用がかかります。不動産を継ぐとは、ランニングコストを引き受けることなのです。

なかでも重いのが解体費用です。産廃費用が上がり、業者も減っているので、今、値段が高止まりしています。小さい一軒家でも200万〜300万円。田舎の農家で離れ付きの大きな建物だと、400万〜500万円かかることもあります。最近だと、広島県尾道市で、解体費用が1000万円を超えるケースの相談を受けました。家の周りに小道しかないので、取り壊しの重機が入れず、瓦礫を手運びするしかないためです。

別荘地も要注意です。固定資産税とは別に、組合が年間数万円ほどの管理費を設定していることがあります。知らずに相続すれば、毎年払い続けることになる。しかも、手放したくても売れません。0円で売りに出しても、5年経っても買い手がつかないエリアだってあります。

かといって、放置も許されない時代です。空家等対策特別措置法にもとづく改善命令に従わなければ罰金。最終的には行政が取り壊し、その費用を請求されます。

そのため、これから不動産を相続する予定がある方は、どんな土地で、どんな問題を抱えているかを、早い段階で見極めてください。

まず、地元の不動産業者に査定を依頼しましょう。売れるのか、売れるとしていくらか。売れない可能性があるなら、持ち続けたときのリスクも、同じ業者に聞いてみるといいでしょう。必要なら、似た案件を扱った経験のある弁護士や司法書士に相談する。トータルでマイナスになりそうなら、放棄のほうが安全です。

(構成=村松まりこ)