完璧を目指すと面倒すぎて挫折する
「相続は準備が10割」――。これが、ありとあらゆるトラブルを目にしてきた私の実感です。相続は、ひとつやり方を間違えれば家族同士の争いにつながります。ひどいケースでは、弁護士を巻き込み、何年も争いが続くことも珍しくありません。
ただでさえ相続手続きは非常に面倒なものです。エンディングノートなどがあればいいのですが、そうした備えをしている人はまだまだ少数。故人の財産を把握するだけでひと苦労です。
さらに、相続税の問題もあります。節税目的で手の込んだ対策を行った結果、家族仲が悪くなったり、税務調査で問題になったりする例を数多く見てきました。節税方法を説く記事は巷にあふれていますが、そうした情報に振り回されると、かえって面倒なことになる恐れがあります。
とはいえ、身構える必要はありません。大切なのは、早く始めること。それも、できることから一つずつで十分です。将来起こりうる問題を想定し、その芽を摘み取っておくことで、相続は驚くほどスムーズになります。「何から手をつけていいかわからない」という方に向けて、まずは準備の「5ステップ」をご紹介しましょう。
ステップ1は、本人が保有している財産の一覧表をつくることです。いきなり完璧なものをつくろうとすると、面倒すぎて挫折してしまいます。まずは、雑な手書きで十分。どこに何があるかがわかればそれでOKです。この段階では金額の書き込みも必要ありません。ただし、預貯金や不動産など「プラスの財産」だけでなく、ローンのような「マイナスの財産」も忘れずに書いておいてください。
このとき特に重要なのは、家族に存在を知られていない財産を書きのこすことです。たとえば昔、ブームに乗って山林を買った人も少なくありませんが、そのほとんどは固定資産税がかからないため、市町村からの納税通知書が届きません。
税額を把握すれば漠然とした心配は不要
また、個人年金や生命保険に加入している人は、亡くなったらすぐに請求の手続きができるように、保険証券などの書類を集めておきましょう。ネット銀行・ネット証券の口座にログインするための情報や、借地権などの契約情報も必要です。
持っている財産を洗い出したら、それぞれの項目の横に、わかる範囲で金額を書いていきます。これがステップ2です。「○○銀行の口座には預金が××万円」などと、だいたいの数字をメモしていきます。証券は銘柄別ではなく、口座ごとの評価額を書いておくだけで構いません。
不動産については、相続税申告を行うときに路線価を調べるなど細かい計算が必要になりますが、この段階では面倒な調べものは一切不要です。固定資産税の納税通知書に書いてある評価額をそのまま写すだけで十分です。
財産の総額を把握できたら、ステップ3――相続税がかかるかどうかの試算をします。相続税がかかるのは、財産の総額が基礎控除額を超えたときだけです。基礎控除額は、「3000万円+600万円×法定相続人の数」という公式に当てはめれば計算できます。
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