相続税節税のための抜け道を封鎖する改正が、この10年、不動産関連だけで5回あった。大損しないために知っておくべき知識を、相続税専門の税理士に聞いた――。

国が塞いだ抜け道その対策は大丈夫か

資産を現金ではなく不動産で持っているほうが、相続税が安くなる。そんな話を聞いたことがある方は多いと思います。これは根拠のある話で、工務店やハウスメーカーが「アパートを建てれば節税になります」とすすめているのも嘘ではありません。

相続税は、亡くなったときの遺産の時価に対してかかります。預金なら残高がそのまま時価ですが、不動産の時価は、不動産鑑定士でない限り、正確な市場価格を把握するのは困難です。そこで国税庁は、誰でも簡単に評価できるよう、土地は路線価方式(路線価の設定されていない土地は倍率方式)、建物は固定資産税評価額という簡易なルールを定めています。この評価額は市場価格よりもかなり割安に設定されています。というのも、路線価は毎年見直されるものの、実際の地価は365日変動しているので、評価しすぎを避けるために、実勢価格の約8割に抑えられているためです。

また、人に貸している不動産であれば、土地はそこから約2割、建物は約3割、評価額が引き下げられます。たとえば、現金1億円で購入した土地にアパートを建てると、土地の相続税評価額はおよそ6400万円まで下がる計算になります。評価額を3600万円分圧縮できることになります。

不動産の評価額が下がる理由には、もう一つカラクリがあります。固定資産税評価額は、使われている建材と施工方法によって機械的に点数化されるだけで、その土地の人気度は一切反映されません。東京タワーが見える都心の一等地でも、人里離れた場所でも、同じ材料で建てた家なら評価額は同じです。ところが売買価格は、人気のある場所ほど跳ね上がります。このギャップの大きさこそが、後ほど触れるタワーマンションを使った節税ブームを生んだ、そもそもの理由です。

こうした仕組みを聞くと、現金をマンションや賃貸物件に換えておけば、それだけで相続税対策は万全だ、と考える方は少なくありません。しかし、実はその安心こそが落とし穴の入り口でもあるのです。

国はこの10年あまり、行き過ぎた不動産節税を一つずつ封じ込めており、制度改正は、これまでに少なくとも5回行われています。中でも2027年からは、賃貸用不動産の評価ルールが大きく変わる予定で、これまでの対策が適用しなくなる可能性があります。

ルールを知らないと、評価額の計算だけでなく、空室の扱いや特例の使い方など、細かな条件でつまずきかねません。そこで、なぜ今、国が不動産への規制を強めているのか、その背景からお話ししましょう。

Part 1
2027年開始予定の「5年ルール」で駆け込みアパート節税は通用しない

「買えば下がる」はいつまで通じるか

国が制度の趣旨から外れた不動産節税に厳しい目を向け始めたきっかけは、2015年に相続税の基礎控除が大きく引き下げられたことでした。その結果、相続税を納める人が一気に増え、不動産を使った節税に関心を寄せる人も増えました。

それ以降も、国は行き過ぎた対策を封じる改正を重ねており、不動産に関する改正は、影響の大きな改正だけでも5回に及んでいます。

まず18年には、小規模宅地等の特例のうち「家なき子特例」が厳格化されました。この特例は、亡くなった方に配偶者や同居する相続人がいない場合に、3年以上借家住まいをしている親族が自宅を相続すれば、評価額が8割減になるという制度です。

(構成=大島七々三)