※本稿は、パット・フリン (原著)、鈴木ファストアーベント理恵 (翻訳)『リーン・ラーニング 「ものにする」人が自然とやっている 最小のインプットで最大の成果を得る学習法』(翔泳社)の一部を再編集したものです。
困難な状況に身を置くと、速く学べる
私たちは誰しも、けっして望んだわけではないのにそうするよりほかなく、大急ぎで学ぶことを迫られるような、大きなプレッシャーのかかる状況に直面したことがあるのではないだろうか。重要な試験に向けて寸暇を惜しんで勉強しなければならない、仕事上の厳しい締め切りと闘わなければならない、もしくは解雇されて人生の立て直しを図らねばならない、等々。私たちは皆、コンフォートゾーンから抜け出し、短期間のうちにものごとを解決しなければならない状況を経験したことがある。
これまでの人生でのこういった場面を振り返ってみると、大体において問題が起きてから対応していたことがわかる。重圧のかかる状況をあえて選んだというよりも、むしろ新たに取り組んだことや、やむを得ず取り組んでいたことに付随するようにして、そのような状況が向こうからやってくるのだ。これらの困難な状況のおかげで、確かに私は自らを鍛え、成長することができた。だが同時に、次のような疑問が湧いてきた。
「もしかしたら、意図的にプレッシャーの高い状況に身を置くことで、新しいことをより迅速に学ぶことができるのでは?」
私はこれを「自発的強制機能」と呼び、実践を続けている。あえて自分を困難な状況、言い換えればステップアップを迫られるような状況に追いやることで、自分との約束を果たし、目標を達成する可能性を高めることができる。環境を選択することで、学習と成長のスピードを加速させるのだ。
×つらさに耐える、○逃げ道をなくす
ただし、成長と学習を目的としてプレッシャーの高い状況にあえて自分を置くことと、バーンアウト(燃え尽き)や精神が崩壊する寸前まで自分を追いやることのあいだには、微妙なバランスが存在するので、ここは細心の注意が必要だ。
起業家として、またアドバイザーとして複数のスタートアップに関わる中で、自ら進んで困難な課題に挑戦した結果、心身の健康を損ねてしまった人たちを実際にこの目で見てきた。
理解してほしいのは、自発的強制機能は、仕事こそが自分の人生だと考え遮二無二働くことでも、成功のための通過儀礼だとばかりに幸福や安心を犠牲にして痛みに耐え抜くことでもない。そうではなく、このアプローチは、一定の時間をかけて、意識して自分のコンフォートゾーンを少しずつ広げていくことで、個人の成長と仕事上の成長を遂げていくためのものなのだ。
自発的強制機能は、行動を促すために意図的に強制力を働かせるよう設計される。条件を整えて、望ましい行動をほぼ不可避なものにする。環境やルーティンに構造的な変化をもたらし、継続的な成功を促進する役割を果たすので、長期的な習慣形成や、気がめいるタスクの先延ばしを克服するうえでとくに効果を発揮する。

