苦手なルアーに6時間向き合ったら“釣れた”
私は3歳で釣りを始め、これまで海釣り・川釣りを問わず、さまざまな方法で魚を釣ってきたが、唯一どうしても理解できない釣り餌があった。ジグである。疑似餌(ルアー)の一種で、おもりとフックからなり、通常、動きを与えるために先端にプラスチック製の細い紐の束がつけられている。魚が食いつくと、餌を模した刺激的な動きが伝わり、口にしっかりと針が引っかかるようになっている。ジグに引き寄せられるのは、たいてい大きめの魚だ。
つねづねジグを使った釣りを学びたいと思っていたのだが、まったく自信をもてなかった。何度か挑戦したものの、そのたびにクランクベイトやプラスチックワームといった、自信のあるルアーに逃げてしまうのだ。だがある日、釣りに行く準備をしていたときに、ふと自発的強制機能の実践を思い立ち、ジグ以外の疑似餌をすべて自宅に置いていくことにした。
その日、水上での6時間、ジグの使い方を学ぶほか私に選択肢はなかった。慣れ親しんだルアーに戻りたくても、ほかのことを試したくても、ないものはない。ジグの使い方を学ぶことを強いられたのだ。1日の終わりも近くなる頃、とうとう魚を釣りあげることができた。それだけでもう満足だった。これ以降、私はジグに自信をもてるようになり、「こんなことしていたって魚なんか釣れるものか」と独りごち、ネガティブループに陥ることもなくなった。
その後、ジグを使って、私の釣り人生でもっとも大きなラージマウスバス(オオクチバス)をいくつか釣りあげた。その中には、私の釣り歴最大のバスも含まれている。これこそが自発的強制機能の力なのである。
目標を宣言すると、脳が“達成”を錯覚する
皆さんに1つ質問だ。目標は他人と共有する方が良いと思うか? それとも共有しない方が良いか? この後すぐに科学に基づいた答えを紹介するが、きっと驚くはずだ。
たとえばソーシャルメディアなどで自分の目標や計画を表明すると、説明責任を果たさなくてはならなくなるので、これも自発的強制機能として作用するのではないかと多くの人は単純に考える。ところが研究によると、このアプローチは逆の効果を招く可能性もあるのだ。
ニューヨーク大学の心理学者、ピーター・ゴルヴィツァー教授が中心となって行った2009年の調査において、他者と目標を共有した実験参加者は、「自分が目標の達成に近づいたように感じる」と報告したことが明らかになった。実際にはなんの進捗もないのにだ。目標を共有する行為そのものが早計な達成感をもたらし、その結果、実際に目標を達成するために必要な努力を続けるモチベーションを低下させたのである。
ゴルヴィツァー教授と彼の研究チームは、誰かに目標をシェアすると、認識してもらえたこと自体が報酬となり、努力を怠る原因になり得ると結論づけている。言い方を変えると、他人に「この人、目標を達成しそう」と見られることの満足感のおかげで、脳が「すでに達成した」と錯覚する可能性がある。これにより、目標達成へのプレッシャーが軽減され(なぜなら、あなたの頭の中ではすでに達成したことになっているから)、結果として歩みが止まってしまうというわけだ。

