自信満々に見える若手は、実は自己評価が低い――。生意気に見える態度の内側では「自分はここでやっていけるのか」で揺れているという。経営学者の舟津昌平さんが、上司が誤解しがちな若者の本音と、その向き合い方を解き明かす。

未熟なのに態度は一人前しかし自己評価は低い

最近の若手は、やたら自信がありそうに見える……そんな声を聞くことが増えました。何か仕事を頼むと「それは私でなければいけないのですか」などと、口答えに近い返事が返ってくるというのです。「こういう仕事はやりたくないんですよね」などと、はっきり断ってくることも珍しくありません。

仕事ぶりはまだ心もとないのに物言いだけは一人前で、堂々としている。昭和・平成一桁世代が新人だった頃の振る舞いとは明らかに違います。「最近の若い人は、どうしてあんなに自信満々なんだろうな」と首を傾げている上司・先輩社員も多いのではないでしょうか。

ところが、若者の意識を調査した資料を見ると、その実態はずいぶん違うようです。個々の職場で受ける印象とは裏腹に、マクロで眺めた若者は「自分に自信を持てない」側にいるのです。

若手社員の能力を12項目で本人と評価者(上司)が採点した調査※1では、9項目で自己評価が評価者評価を下回りました。特に差が大きかったのが「ストレスコントロール力」で、評価者の採点は本人よりも0.48ポイント高くなっています。次いで「発信力」が0.28ポイント、「情況把握力」が0.22ポイント、評価者評価が自己評価を上回りました。若手は自分の能力を、周囲が見るよりも低く見積もっているのです。

※1:マイナビ研修サービス「社会人基礎力診断」(2023年5月〜2026年1月)

自信がないのに自信満々に見えるのは、矛盾しているように思えるかもしれません。ですが、「虚勢を張っている」と考えれば腑に落ちるのではないでしょうか。口答えのような受け答えも「やりたくない」という拒み方も、自信があるからとは限りません。上司や先輩が自信満々と見ているものの正体は、隠し切れない自信のなさなのです。

私が接する若い人たちから伝わってくるのは「自分はここでやっていけるのか」という不安です。会社が自分をこの先も必要としてくれるのか確信が持てません。上司から言われたことだけをやっていて、評価に結びつくのかと疑問を感じています。目の前の指示に従うほど、その先に続く自分の将来が見えなくなる心細さを胸の内に抱えています。

そうした不安は、素直な弱音としては出せません。上司や先輩に吐露すれば「彼はメンタルが弱いから任せられない」と判断されてしまうかもしれないと恐れるからです。かつて、若者が「自分はやっていけるのでしょうか」と泣き言を並べ、先輩が「大丈夫だ、俺にもそんな時期があったよ」と励ましたりした飲み会の席はもうありません。若手は、一人のビジネスパーソンとして職場で自立し、上司や先輩とも対等に向き合わなければならないと思っているのではないでしょうか。

自信満々に見える若手の本音は「自信なんてない」

「成長」という強迫観念上司世代と違う教育環境

今どきの若者は、就職活動で「あなたには何ができるのか」と問われ続け、自分の能力への評価に敏感になっています。終身雇用が解体に向かうなかで、一社で勤め上げて安定した人生を築く前提も崩れました。この会社にずっといていいのか、社外に出ても通用するスキルを磨かなければ――。自力でキャリアを築いていかなければならないという強迫観念が、若者を支配しています。

今の若手には「成長」という言葉がとても強く響きます。就職活動のセミナーでも「志望先は成長できる環境か」「成長させてもらえるか」と繰り返し問い、問われ続けます。あるIT企業では、新入社員研修に転職を見据えたキャリアを考えるセミナーが組み込まれていたそうです。「入社と同時にそんなことを言われたら嫌だよね」とその会社のベテラン社員は漏らしていました。

(構成=渡辺一朗 イラストレーション=村田篤司)

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