全く同じ文面なのに「AIが書いた」とわかった途端、受け手の心が冷める。気の利いた言葉ほどAIは得意だが、それがかえって信頼を損なうことがあるのだ。人と人工物の共感を研究する大澤博隆さんは「相手の心に触れる言葉まで任せてはいけない」と説く――。

「相手はコンピュータ」になぜ失望するのか

他者とのコミュニケーションに生成AIの手を借りることは、珍しいことではなくなりました。メールやチャットの文章を整えたり、敬語が適切かどうかを確かめたり、締め切り間際で粗くなった言い回しを穏やかにしたり。事実だけを入力して「もう少し丁寧にして」と頼むこともできます。私の周囲にも、そのようにAIを使う人がたくさんいます。

そもそも言葉のやり取りに技術が介在すること自体は、生成AIが一般化する前から普通に行われていました。ひらがなを漢字に変える変換も、前後の文脈を見ながら候補を選んでいます。スマートフォンが次の単語を予測してくれるのも同じです。海外への返信を機械翻訳で下書きし、少し手直しして送ることも当たり前になっています。私たちは以前から、さまざまな手助けを受けながら言葉を交わしてきたのです。

ただ、生成AIに搭載されている大規模言語モデルには、これまでとは違う広がりがあります。文章だけでなく、画像や音声も扱い、特定の用途に限らず、さまざまな場面で人のコミュニケーションを手助けできるようになりました。便利な道具だったテクノロジーが、人と人とのやり取りそのものに入り込むようになっています。ただし、人と人とのやり取りにAIが入り込むと、少しおかしなことが起きることもあります。

(構成=渡辺一朗 イラストレーション=村田篤司)
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