辞令一枚で住む土地が決まる――。長らくサラリーマンの宿命とされてきた「転勤」の在り方が変わり始めている。第一生命は月最大16万円の手当を掲げるが、『転勤の社会学』著者の藤野敦子氏は「決定権を会社から個人へ移すことこそ本質」と説く。

「同意なき転勤」を廃止従来よりも高い手当に

大手生命保険の第一生命が、2027年度から社員(内勤職)約1万5000人を対象に「本人の同意なき転勤」を廃止すると発表しました。社員自身が「基準勤務エリア(中長期的にキャリアを形成したいエリア)」「転勤可能エリア(転居あり転勤範囲)」を選択でき、「転勤しない」という意思表示も可能に。転勤を受け入れた社員には月額最大16万円を支給する見込みです。

これまで一般的に5万円程度とされてきた赴任手当と比べれば大きな増額で、「会社が命じ、社員はそれを受け入れる」というひと昔前の通念からすれば画期的かもしれません。

歴史をひもとけば「転勤」という言葉は、近代的な会社制度が整備されていく明治期から見られるようになりました。当時、会社が海外や地方に拠点を作った際に、トップの判断で拠点の運営が担える人材を転勤させていたのです。ただし、転勤者の多くは将来、会社の経営を背負って立つような、有能な人材に限られていました。

(構成=渡辺一朗 イラストレーション=村田篤司)