得票数2位の藤垣氏が選出された理由
東京大学の総長選考が物議を醸している。
今年9月、東大で次期総長を選ぶための選考が行われた。9月28日の教職員による意向投票は計2回実施され、その結果、染谷隆夫氏が過半数の51.0%にあたる1107票を獲得。次点の藤垣裕子氏が25.5%の553票だった。
これが議員選挙ならば、過半数を取った染谷氏の当選で文句なし、というところだろう。
ところが、その日の午後に総長選考・監察会議(以下、選考会議)が次期総長予定者として選んだのは、2位の藤垣氏だったのである。意向投票で1位ではない候補が総長に選ばれるのも、女性が総長に選ばれるのも、初めてとのことだ(注1)。
選考後の記者会見で国谷裕子議長は、藤垣氏が「文理融合」「学内外のコミュニケーション」「幅広い国際的経験」などを通じ、「より開かれた大学に向けた変革を実現する十分な能力」を持っていることを選考理由として挙げた(注2)。
加えて「批判が出ることは予想しているものの、大きな問題が生じるとは考えていない」という趣旨の認識も示した。なお、藤垣氏が女性であることは議論の対象にならなかったとも明言している(注3)。
それでもこの結果に対して、大学の内外でなお批判が続いている(注4)。
注1:東大新聞オンライン「【速報・総長選考2026】次期総長は藤垣裕子教授 意向投票で第2位」
注2、注3:東大新聞オンライン「【総長選考2026】藤垣裕子教授の次期総長選出で会見 選考会議『意向投票とのズレは大きな問題ではない』」
注4:産経新聞「やっぱりおかしい東京大学 ネット大荒れ『女性枠学長』」
京都大学も同じ事態に見舞われた
10月6日には、文部科学大臣の記者会見で、この問題について質問が飛んだ(注5)。実は最終的に国立大学の学長を任命するのは文部科学大臣なのである。とはいえ、原則的には「承認」するのみらしく、大臣の返答は「引き続き注視する」という曖昧なものではあったのだが。
筆者の周囲でも、
「せっかく2回投票したのに……」
「何のために投票したのかわからない」
など疑問の声が聞かれた。筆者がこの結果を聞いた正直な感想は、「大学は、大事なことも自分で決められなくなっている」だった。その意味は、おって説明していきたい。
興味深いことに、今年は京都大学でも似た問題が起きている。10月1日に総長に就任した立川康人氏は、6月の教職員による意向調査では299票の3位だったのだ。京大の職員組合から選考が教職員の意思を反映していないとの批判も出ている。
日本を代表する2つの国立大学で相次いでこうした事態が起きたことを考えると、2026年は大学経営のあり方を考えるうえで象徴的な年になった、といえるかもしれない。
注5:文部科学省「関芳弘文部科学大臣記者会見録(令和8年10月6日)」

