絶頂期に「カリスマ創業者」が辞任
この最大の懸念に対し、2代目として舵取りを引き継いだ長男の髙田旭人氏は、見事なまでに構造的な改革を断行した。旭人氏は、先代が築き上げた「お客様想像力」「見つけて、磨いて、伝える」「不易流行」などの創業の精神を深くリスペクトしつつも、経営手法においては「個人カリスマへの依存」からの完全脱却を掲げた。
具体的には、先代の感覚やトップダウンに頼っていた意思決定プロセスを再構築し、社員の主体性を引き出す「チーム型経営」へ移行。働き方改革や業務の標準化・デジタル化、自律的組織の構築を進めた。さらに、テレビ通販一本足打法からの脱却を図り、ウォーターサーバー事業、クルーズ旅行事業、スポーツ地域創生(長崎スタジアムシティプロジェクト)など、事業の多角化を次々と成功させた。
何より特筆すべきは、創業者である明氏の潔い決断だ。2015年、明氏は絶頂期において社長を辞任しただけでなく、後継者に一切の決定権を譲り渡し、顧問や相談役として裏から口を出す「院政」を完全に封印した。
その結果どうなったか。創業者が去った後も同社は成長の手を緩めることなく、旭人氏への社長交代時に約1500億円だった連結売上高は倍近くにまで伸長。2024年12月期には過去最高の2725億円を記録し、2025年12月期には2908億円に達するなど、3期連続で過去最高売上を更新し続ける盤石な超優良企業へと進化を遂げた。
業績が伸び悩む中、父娘対立が苛烈化
対照的に、同族経営の持つ悪しき側面がすべて表面化し、悲劇的な結末を辿ったのが大塚家具のケースである。
創業者の大塚勝久氏が築き上げた同社は、「会員制」「コンサルティング営業」「高級家具」を強みとして日本のインテリア業界を牽引してきた。しかし、時代の変化とともにニトリやイケアといった低価格・カジュアル路線が台頭し、業績が伸び悩む中で事業承継の時期を迎える。
2009年に経営権を引き継いだ娘の大塚久美子氏は、先代のビジネスモデルの限界を指摘し、会員制の廃止とカジュアル路線へのドラスティックな転換を模索した。しかし、自らの成功体験に固執する父・勝久氏と、急激な改革を急ぐ娘・久美子氏との間の意見対立は、家族内の話し合いでは収拾がつかないほど苛烈を極めた。

