大事なことがあるときにだけ話す

では、フィンランド流の「静かな人の働き方」とは何か。

言葉にするならば、焦らない。取り乱さない。堂々と構えている。

静かだけれど、芯がある。そんな働き方です。

普段の行動に置き換えると、こうなります。

場を盛り上げるためだけのおしゃべりはしない。まずはじっくり周りに耳を傾け、大事なことがあるときにだけ口を開く。自分を無理に大きく見せない。どれも「引き算」でできています。いらないものを手放していく。それが、フィンランドで私が出会った静かな人たちの働き方でした。

正直に打ち明けると、フィンランドに移住する前の私は、働くとは自分を精一杯アピールすることだと、どこかで信じていました。日本の職場には、そんな空気が流れていることが多いですよね。会議で沈黙が続くと、誰が最初に口を開くのか、みんなが周りの様子をうかがい始めます。

オフィスでミーティングをするチーム
写真=iStock.com/recep-bg
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でもフィンランドでは、沈黙は埋めるべき気まずさではなく、相手が自分のペースで考えている大切な時間です。ここでは、黙っていても大丈夫。そう思えた瞬間、フィンランド流の「静かな人の働き方」をつかみ始めました。

フィンランドで広く知られる3人

とはいえ、頭ではわかっても、「静かなままで本当にうまくいくのか」と心は追いつかないものですよね。そんなあなたのために、フィンランドで広く知られている3人を紹介させてください。

1人目は、マルッティ・アハティサーリさん。フィンランドの元大統領で、ノーベル平和賞を受賞した人です。世界で評価されたのは、相手の言葉にじっと耳を傾け、静かに対話を重ねる姿勢です。その聴く姿勢で、いくつもの国際紛争を解決へ導きました。会議で、最後にひとことだけ発した人の意見がすっと通る場面を、見たことはありませんか。あれは、その人がずっと聴いていたからこそです。静かな人が本来得意な「聴く」は、それだけで大きな力になります。

2人目は、キミ・ライコネンさん。かつて世界の頂点に立ったF1ドライバーで、「アイスマン(氷の男)」という愛称がありました。メディアに媚びず、無駄な主張は一切しません。派手な言葉で自分を飾る代わりに、圧倒的な実力で世界王者へ上りつめた人です。余計な言葉や自己演出に力を使わず、本当に大切なことに集中する。それが、彼の静かな強さであり、静かな人の強みでもあるのです。