9年連続の世界1位
「世界一幸せな国」とは、「世界幸福度報告書(World Happiness Report)」という国連などの団体が連携して行っている調査がもとになっています。この調査に使われているのは、「キャントリルの階梯」と呼ばれる問いです。
“ハシゴを想像してください。各段には数字が振ってあり、上に行くほど数字は大きくなります。下の段は0で、あなたにとって最低の人生。上の段は10で、あなたにとって最高の人生です。今のあなたは、このハシゴの何段目に立っていると思いますか。”
答える人は、この問いに自分の主観で点数をつけます。しかもランキングは、その日の気分で揺れないよう、3年分の回答をならして計算されます。つまり、瞬間的なハッピーさではなく「自分の人生全体に、どれくらい納得できているか」を静かに見つめて答える問いです。だから、控えめで寡黙な国でも高い点数が出ます。にぎやかさと納得感は、別のものだからです。
数字も見ておきましょう。フィンランドは、このランキングで9年連続の世界1位。スコアは7.7台です。一方、2026年版で日本は61位、スコアは6.1台でした。ただ、私はこの差を国の優劣とは思わず、「人生と仕事の距離感の違い」として受け止めています。同じ人間が、同じように働いて暮らしています。ただ、仕事との間合いが少しだけ違います。
「働きすぎ」で叱られた
この差は、どこからくるのでしょう。福祉が手厚いから、という説明もよく聞きますし、一理あります。でも、私が現地で暮らして肌で感じたのは、もっと日常的な、「人生における仕事の置き場所」の違いでした。
フィンランドでは、仕事は人生のたった1つの要素にすぎません。大事な要素ではあるけれど、すべてではない。人生というテーブルの上に、家族や趣味や休息と並んで、仕事もちょこんとのっている。そんな感覚です。
むしろ、仕事「だけ」の生き方をしていると、周りから冷ややかに見られます。私自身、フィンランドで働き始めて、6カ月の試用期間を終えたころ、「同僚たちから不満の声が出ているから、働きすぎないように」と言われた経験があります。
ひとりが突出して長く働くと、それが基準になり、みんなが無理をしなければならなくなります。だから、そっとブレーキをかけ、みんなが長く続けられるように歩幅をそろえている、ということでした。この国の幸福度の高さには、こういう日常の積み重ねがあります。

