ムーミンの世界が生まれた環境
3人目は、トーベ・ヤンソンさん。あの『ムーミン』を生み出した作家です。彼女は人生のおよそ30年間、夏のあいだを、電気も水道もない無人島で過ごしました。その静けさの中から、あの豊かなムーミンの世界は生まれました。私たちに真似できるのは、自分の力を発揮できる環境を、自分で選んでいいということです。それは決してわがままではなく、静かな人が力を発揮するための、大切な条件なのです。
この3人に共通しているのは、「静かであるにもかかわらず」成功したのではない、ということです。無理に自分を大きく見せたり、誰かのようになろうとしたりせず、自分の持ち味をそのまま活かしてきた。3人の生き方は、「ありのままの自分でいること」が、自分の力を長く発揮するための土台になるということを教えてくれています。
「ありのままで幸せに働く」ためのキーワードは、「自分軸」です。自分は何を大切にしたいのか。何を求め、何はそこまで求めなくてもいいのか。その線を引くためのものさしを、自分の中に持っていることです。ただ、それは決して簡単なことではありません。
大学生からの一言
以前、フィンランドのアールト大学の学生たちに自分のキャリアについて話す機会がありました。そこで私が、「私は結局、人生を楽しみたいんだと思う」と話すと、ある学生が少し不満そうな顔で、「失礼かもしれませんが、それって子どもっぽいですね」と返しました。その学生は、将来起業したいという大きな目標を持っていました。きっと「世界を変えたい」と語るような、華やかなキャリアを歩む人に刺激を受けたかったのでしょう。
振り返ってみれば、私自身も若いころは、その学生とそれほど違わなかったと思います。だから、もし今、「ありのままで幸せに働くと言われても、いまひとつピンとこない」と感じている人がいても、不思議ではありません。こうした考え方は、言葉で聞くだけでは、なかなか自分のものにはならないからです。
だからこそこの本では、私自身が試行錯誤してきた経験や、フィンランドの人たちからもらった人生の指針をもとに、フィンランド流の「静かな人の働き方」を、日々の仕事で実践できる形に落とし込みました。
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