ラブドールと結婚したり、複数のラブドールに囲まれて生活している人たちがいる。彼らはなぜラブドールに魅力を感じ、どのような生活を送っているのだろうか。『無機的な恋人たち』(講談社)でラブドールやキャラクターを愛する人々を描いた、ノンフィクションライターの濱野ちひろさんに聞いた――。(第1回)

なぜ「人間以外のもの」との性行為に関心を持つのか

――前作の『聖なるズー』では犬や馬などの動物をパートナーとする動物性愛者が描かれています。今回は等身大人形やフィクションのキャラクターなどの「無機的なもの」と人間との性的関係がテーマになっています。なぜこうした題材を本にしようと思ったのでしょうか。

私は2016年から現在に至るまで、人間と人間ではないものたちの恋愛事情を調査しているのですが、極端な事例を通して、普遍性にたどり着きたい、というのが動機のひとつです。

動物や人形との性的行為というのは非常に極端な事例ですが、そういった事例から人間同士の愛や、結婚という営み、といった普遍的なテーマへの理解が深まると考えています。命がないものと対峙したとき、人間がどういう思考や向き合い方をするのか、そして私自身がどう感じるのかに強い関心がありました。

取材に応じる著者の濱野ちひろさん
撮影=プレジデントオンライン編集部
取材に応じる著者の濱野ちひろさん

無機的なものへの愛着や性愛関係は、動物性愛に比べたらメジャーなものだと考えています。幼いころに人形と触れ合った経験がある人も少なくないでしょうし、アニメのキャラクターに恋をしていると公言する人も少なくありません。

私自身も子供の頃に、手塚治虫が描いたブラック・ジャックに恋をしていたことがあります。無機的なものに対する性愛の感覚は極端なものではあるものの、そこまで遠い存在ではないといえるのではないでしょうか。

そうした無機的なものとの交流や性愛関係、あるいは結婚といった人と人とでしか成り立たないとされてきた関係性を通じて、セックスとはなにか、そして愛とはなにかということを問いたいと考えたのです。