仕事に対するモチベーションを維持するにはどうすればいいか。人気アニメなどの劇伴を手掛ける作曲家の澤野弘之さんは「『進撃の巨人』のサントラが10万枚近く売れても複雑な心境だった。ただ、思うようにいかないからこそ『次の作品こそは』とモチベーションを保つことができる」という――。
※本稿は、澤野弘之『錯覚の音』(扶桑社)の一部を再編集したものです。
「絶対ヒットする」とまでは思っていなかった
『進撃の巨人』(*1)の音楽を担当することが決まった時、この作品がヒットするとは、実はそこまで思っていなかった。
*1:諫山創によるダークファンタジー漫画。荒木哲郎監督、WIT STUDIO制作により2013年にテレビアニメ化され、以降、制作体制を変えながら第4期まで放送。2023年に完結した。澤野は全シリーズの劇伴だけでなく、劇場版の主題歌なども担当した。
人気コミックがアニメ化されればヒットが約束されたというような風潮があるが、当時の僕は逆のイメージももっていた。その頃、原作コミックは絶大な人気を誇りながらも、アニメ化では大成功したとは言い難い作品をいくつか目にしていた。
あまりに原作ファンが多い作品は、期待値も上がる上、ファンそれぞれの中に声やキャラクター・世界観などのイメージができてしまっていて、アニメ化が逆に難しいのではないかと感じていたのだ。
『進撃の巨人』も、書店で平積みされているのを見て注目作であることは知っていたため、そうしたプレッシャーの中にある作品なのではないか、と考えていた。だから、「これはヒットが約束されたぞ」と確信をもって取り組んでいたわけではなかった。

