二度目の依頼でわかる前作の評価
だからといって音楽制作の意欲がなくなったわけでは断じてない。何よりも、『進撃の巨人』の仕事で嬉しかったのは、『ギルティクラウン』で組んだ荒木哲郎監督(*2)が、再び自分にオファーをくれたことだった。同じ監督から二度目のオファーをもらえるなど、当時は考えてもみなかった。おそらく、ドラマの演出家の方を除けば、荒木監督が初めてだったと思う。
*2:1976年生まれのアニメーター、アニメ監督、演出家。代表作は『進撃の巨人』『ギルティクラウン』『甲鉄城のカバネリ』他。そのいずれの作品も澤野が音楽を担当している。
『ギルティクラウン』では、歌モノの楽曲を多用するなど、かなり自由な発想でやらせてもらった。荒木監督が喜んでくれているという手応えはあったが、この業界では社交辞令も多い。「またよろしくお願いします」という言葉も、打ち上げの場では誰もが口にするものだと、天邪鬼な自分は捉えていた。
だから、『進撃の巨人』で再び声をかけてもらった時、初めて「ああ、『ギルティクラウン』の音楽を本当に気に入ってくださったんだ」と実感できたのだ。
これはどの監督に対しても同じだが、こうして二作目のオファーが来た時に、初めて前作での仕事が本当に評価されたのだと感じることができる。自分自身は納得のいくものを作ったという自負はあっても、それを他人も同じように感じてくれているとは限らない。だから、『進撃の巨人』のオファーは本当に嬉しく、また荒木監督に面白がってもらえるような曲を作ろうと、意気込んで制作に臨んだ。
そして、『進撃の巨人』のアニメが放送されると、社会現象とも言える大ヒットとなった。予期せぬ事態に、「自分もこんな作品に関わることがあるんだ」と、少々他人事のような気持ちで状況を見ていた。
10万枚ヒットでも素直に喜べなかった
『進撃の巨人』のTVアニメが第一期の中盤に差しかかった頃、サウンドトラックが発売された。予約段階で、通常のサントラよりも受注が多く来ているという話は聞いていた。当時、CDとダウンロードを合わせて10万枚近くになったと記憶している。自分のサントラの中では、もちろん『進撃の巨人』が最も売れた作品となった。
サントラとしてはヒットと言える数字だろう。しかし、どこか素直に喜べない自分がいた。
なぜなら、『進撃の巨人』が放送される数年前に、自分が尊敬する菅野よう子さんが『マクロスF(フロンティア)』(*3)のサウンドトラックで、1タイトルあたり25万枚を超える売上を記録していたからだ。
*3:日本のテレビアニメ作品。およびそれを原作としたメディアミックス作品。2008年にテレビアニメが放送され、菅野よう子が音楽を担当した。
『マクロスF』はもちろん大ヒット作だが、『進撃の巨人』も子供から大人までを巻き込む社会現象とまで言える作品だった。それなのに、サウンドトラックの売上は『マクロスF』の方が圧倒的に上なのだ。

